米FDA、メルクのコロナ経口薬を承認 高リスクの成人対象
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記事は米メルク社の記者発表をベースにしていますが、同社の焦りがにじみ出ているように読めます。もともとメルク社は新型コロナウイルス用の抗ウイルス薬「モルヌピラビル」(飲み薬)で少なくとも数カ月先行していました。最終段階の臨床試験成績が良好であったため、臨床試験のコントロール委員会が「プラセボ投与群が不利益になっている」と警告し、早期に打ち切られ解析に回されました。これも早期開発につながりました。しかし、遅れて臨床試験が開始された米ファイザー社製抗ウイルス薬「パクスロビド」では、さらに早期の段階で「プラセボ投与群が不利益になっている」ことが指摘され、より短期間のうちに臨床試験が終了したという経緯をたどっています。
抗ウイルス薬は、「飲み薬」であってもウイルスが増殖する際の遺伝子の複製を阻害するという作用機序を有していることから、ヒトの細胞分裂に影響を及ぼす可能性があらかじめ想定されており、記事中にある「骨と軟骨の成長に影響が出る可能性」も想定される抗ウイルス薬の特性と一致したもので警戒の範疇でした。しかし、判定としては「若年層に対して許容できる範囲のものではなかった」ことを示しています。
先述のように、今回の判断には同系統の代替薬の存在が強く影響しています。ファイザー社製との直接比較ではありませんが、有効率に大きな差が出ていることから、メルク社製については実質的な必要性に乏しいとの判断が突き付けられた形です。
医薬品の特性上、今後ファイザー社製の抗ウイルス薬に極めてまれな副作用が出現する可能性、国際的な調達競争の過熱による調達不足、製造上の問題における供給減少など数々のリスクに備えるために必要との判断でもありますが、臨床の現場ではファイザー社製が優先されることが予想されます。
製品名 モルヌピラビル パクスロビド
販売企業 米メルク 米ファイザー
分類 抗ウイルス薬 抗ウイルス薬
作用機序 mRNA合成阻害 3CLプロテアーゼ阻害
臨床試験成績 約30%重症化リスク減少 約90%の重症化リスク減少
米国の調達価格 1回約700ドル 1回約530ドル
使用対象抜粋 18歳以上 13歳以上
他の治療法が選択できない患者第5波の終盤では、軽症者への抗体カクテル療法が役に立った。しかしオミクロンには抗体カクテル療法の効果が低下することがわかっている。政府が飲める治療薬を確保してきたことが、来るべき第6波に向けた備えになりそう。有効性が高いファイザー社の経口薬も重要。