2021/12/21

赤字1億円超のバスケクラブ。大企業チームと異なる「勝ち筋」

スポーツライター
コロナ禍でプロスポーツクラブが苦しい経営を強いられるなか、プロバスケットボールの「Bリーグ」は12月16日、2020-21シーズン(2020年度)の決算を発表した。
改めて浮き彫りになったのは、人気クラブとそれ以外の“格差”だ。
B1、B2の全36クラブのうち、営業収入トップは昨季王者の千葉ジェッツで20億3982万円。
大阪エヴェッサが15億7016万円、アルバルク東京が14億2758万円、宇都宮ブレックスが14億809万円と続く(※1万円未満は四捨五入。以下同。出所はBリーグ公式サイト)。
コート内外で好調の千葉ジェッツ(©B.LEAGUE)
一方、B1でも信州ブレイブウォリアーズや横浜ビー・コルセアーズなど7クラブが営業収入5〜6億円台にとどまった。
B2に目を向けると、最も低い香川ファイブアローズは1億4865万円だった。
リーグ全体の営業収入は約242億円で前年から約7.9%成長したが、36クラブのうち約4割が赤字(B1が11クラブ、B2が4クラブ)。約3割のクラブが債務超過(B1が5クラブ、B2が6クラブ)と苦しい状況に置かれている。
Bリーグの規定として、債務超過や3期連続赤字となったクラブにはライセンスが交付されない。
2019-20シーズンからコロナ禍の特例が適用されているものの、来季から3期連続赤字を認めないという基準などが復活し、さらに2024年秋には「新B1」の審査がスタートする。
早ければ今年12月から観客収容率100%で開催することをBリーグは発表しており、各クラブにとって経営の立て直しは不可欠だ。

事業力を基準に「リーグ再編」

2016年に始まったBリーグは生誕10年後の2026年、新しい局面を迎える。
2026-27シーズンを前に新たにB1、B2、B3の参加クラブが見直され、リーグ再編が行われるのだ。
構造改革を行う背景について、Bリーグの島田慎二チェマンは今夏、NewsPicksの取材にこう話している。
「チームの人件費格差はどんどん広がっていて、同じB1でも3〜4倍になっています。試合前から、どっちが勝つ、負けるがだんだんわかってきてしまうのは健全ではないなと。

 現状として、経営力がないと1部にいられない。投資できないと上のリーグにいられないので、長い目で見ると大都市圏のチームしか上のカテゴリーにいないという状況になるのは目に見えていました」
カネがある者が勝つのはスポーツの世界でも常だが、黎明期にあるBリーグにとって、今のあり方は明るい未来につながらないかもしれない。
そう考えられ、リーグ全体の構造を見直すことにした。
最大の特徴は競技力ではなく、事業力で所属リーグを分けることだ。経営の安定度を高めるため、昇降格制度は廃止される(※詳細は上記記事参照)。

Bリーグへの投資が進む背景

コロナ前の2018-19シーズンまで順調に観客動員と営業収入を伸ばしてきたBリーグは、地上波での露出も増やすなど確実に存在感を高めてきた。
近年、男子日本代表が久しぶりのワールドカップやオリンピック出場を果たしたように、Bリーグの競技力アップは目覚ましい。
その裏には若手選手の台頭に加え、大手企業の参入による環境改善もある。
プロ野球の横浜ベイスターズを人気チームに変えたDeNAや、エンタメビジネスのスペシャリストであるバンダイナムコエンターテインメントはその手腕をBリーグでも発揮している。
ジャパネットたかたは2020年に長崎ヴェルカを立ち上げ、JリーグのV・ファーレン長崎とともに街づくりの“顔”にするつもりだ。長崎駅から徒歩10分という抜群の立地に2024年、サッカースタジアムを中心とした「長崎スタジアムシティ」が完成する予定である。
バスケへの投資が進む理由について、島田チェアマンはこう話している。
「バスケは選手がたった10人で済むので、いわゆる(金銭的)負担が少ない。オーナーが全部を出すわけではなく、スポンサー、チケット収入、アリーナに付随する駐車場など事業採算性が取れるプロスポーツという観点があるので、投資をする魅力はあると思います」
千葉ジェッツを社長として人気クラブに成長させ、現在はBリーグ全体の舵取りをする島田慎二チェアマン(撮影:中島大輔)

日本で珍しい「共同オーナー制」

各企業のBリーグへの投資が進むなか、興味深い取り組みを始めたクラブがある。
B2の西宮ストークスが今年4月、「共同オーナーシップ」という運営体制をスタートさせたのだ。
いわゆる共同経営のことで、日本のスポーツクラブでは珍しい形態と言える。
対してアメリカではよくあり、例えばメジャーリーグのマイアミ・マーリンズでは元ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターが共同オーナーを務めている。
「私から『共同オーナーになれませんか』と声をかけさせてもらいました。バスケットボールというソフトから、自分たちの街をよくしていきたいと思っていたんです」
そう話したのは、サンワカンパニーの山根太郎社長だ。西宮在住でもともとストークスのスポンサーも務めており、本業にもプラスになると立候補した。
山根社長の要請を受けた理由を、ストークスの渋谷順オーナーはこう語る。
「コスト的には、現時点では弊社(スマートバリュー)だけでも経営できます。ただし、クラブ、アリーナ、地域として理想の世界観を作り上げていくためには、いろんな方々の協力が必要になってきます。ストークスの未来を考えたとき、そうした姿の方がいいと考えました」