2021/12/3

変わらない超巨大市場。だから挑みがいがある

NewsPicks Brand Design Editor
 終身雇用、年功序列を前提とした日本型雇用の綻びを受け、人々の仕事選びに革新的な変化が起きている。
 そんな中、新卒採用事業からこの巨大なマーケットに変革を起こそうとするゲームチェンジャーがいる。
「人の人生を預かる『重たいマーケット』。だからHRは面白い」
 こう語るのは、従来のナビサイトを抑えて、圧倒的な支持を得る就活情報サイト「ONE CAREER(ワンキャリア)」を運営する宮下尚之代表だ。
 この言葉の背景には、2つの変化がある。
 1つは、「情報の透明化」。キャリアに関する情報はこれまで限られた人物・企業が独占してきた。しかし、クチコミサイトなどの台頭により、よりオープンで、より正確な情報が取得できるようになったのだ。
 もう1つは、若者がセカンドキャリアも視野に入れて就職先を選ぶようになったことだ。調査によると、「入社後5年以内に退職、転職する予定がある」と答えた大学生は、全体の約58%に及んだ。
 この流れを踏まえて、「ONE CAREER(ワンキャリア)」が就活生から支持される最大の理由は、約90万人の累計会員によるクチコミだ
 半実名制(投稿したコンテンツをワンキャリアが審査し、個人が特定されない形で公開する)で寄せられる選考情報や就活体験記が、先々までキャリアを考える若者たちのニーズに合致し、創業から6年ほどで、就活生なら誰もが知るサービスへと成長した。
 さらに、今年6月には、転職サイト「ONE CAREER PLUS(ワンキャリアプラス)」をリリース。
 ONE CAREERと同じく、会員のクチコミや体験談を通して、「どこからどこに転職したのか」「なぜ、どのような軸で転職をしたのか」「他に検討した企業はどこか」といった、先輩たちの転職の実例やプロセスを垣間見ることができる。
提供:ワンキャリア
 新卒でも中途でも、共通するのはデータでキャリアの意思決定をサポートする点だ。
 根底には、ワンキャリアが創業時から掲げる「キャリアに関するデータを可視化し、誰でもアクセスできる状態にする」という理念がある。
データによって、人々のキャリア選択はどう変わるのか。キャリアの多様化の先に、どんな未来が待っているのか。
「仕事選びはもっとクリエイティブであるべき」と意気込む宮下代表に、今後の戦略と大きな市場のゲームチェンジにかける思いを聞いた。
INDEX
  • キャリア領域には「データ」が少なすぎる
  • なぜワンキャリアは若者から支持されるのか
  • 人生のマストハブなサービスを目指す
  • 「重たいマーケット」だからHRは面白い

キャリア領域には「データ」が少なすぎる

宮下 就職や転職は人生を大きく左右するイベントです。
 それなのに、意思決定に必要なデータが足りていない──私たちの課題感はここにあります。
 終身雇用が限界を迎え、転職を前提にキャリアを考える時代になりました。
 ところが、日本ではキャリアデータ、たとえば年収や業種・職種ごとのキャリアパス、ジョブディスクリプションなどが、ほとんどオープンになっていません。
 ビジネスの最前線にいる皆さんにも、転職時に自分が欲しいデータがなくて困った経験がきっとあると思います。
反対に、一生で平均11回転職するといわれる欧米では、こうしたキャリアデータが蓄積されていて、誰でもアクセスができます。
 ならば、この仕組みを日本でも実現したい。そう考えてつくったのが、ワンキャリアです。
 そもそも、なぜHR(Human Resources)領域はデータが少ないのか。
 その理由は、第三者として頼れるデータプラットフォームがないからだと考えています。
 候補者と同様、採用する企業側も、データがなくて困っているのです。
 前職の消費財業界では、POS(Point of Sale,販売時点情報管理)で店頭のレジやEコマースでの決済データを提供する専門会社があり、そのデータをもとにマーケティング戦略や経営戦略を立てていました。
 一方、採用や人事の領域は自社内のごくわずかなデータと過去の経験での意思決定がほとんど。
 経験での意思決定を否定するわけではありませんが、数億、数十億円をかけて行う会社の未来への投資だと考えると、データの力も借りたほうが効果的なのは明らかです。
iStock:daneger
 ちなみに、すでにHRデータを抱える会社はありますが、データを提供するというより、「自社で抱え込む」傾向にあります。
 だからこそ、個人にとっても、企業にとっても、よりよい仕事のマッチングのためにもっとデータが必要── 創業から6年、それを念頭にビジネスを進めてきました。

なぜワンキャリアは若者から支持されるのか

 私たちが運営する就活サイト「ONE CAREER(ワンキャリア)」は、創業から6年で累計90万人が使うサービスに成長しました。
 データを用いてキャリアを選べる世界を実現するために、なぜ新卒領域から始めたのかは後述しますが、若い世代にサービスを届けられたことに手応えを感じています。
 ONE CAREERに主に載っているのは、私自身が就活生の時に欲しかった情報や、会員から「こんなことが知りたい」とヒアリングした情報です。
 具体的には、企業の選考内容、面接で聞かれること、内定者の属性など、今までは人づてかつ断片的にしか知り得なかったものが多く含まれています。
 こだわったのは、データの信頼性。選考情報をまとめた掲示板サイトはそれまでもありましたが、匿名がベースでデマも少なくありませんでした。
 ONE CAREERでは半実名制を採用し、不確かな投稿への抑止力を高めたり、内容に誹謗中傷がないかを審査したりと、データの精度を高める工夫を重ねています。
企業ページの様子。現在、ONE CAREERには約1万件の選考データ、約45万件の就活体験談が掲載されている。
 もちろん、クチコミなので企業にとっては都合のいい情報ばかりではありません。
「面接官が少し高圧的だった」「期待していたよりインターンがつまらなかった」など、人事担当には耳が痛い投稿もあります。
 サービス開始当時は、こうした投稿を削除してほしいと企業から連絡をもらうこともありました。
 ですが、「誰もが信頼できるサービスを作りたい」と意図を伝え、丁寧なコミュニケーションを続けたところ、次第に候補者からのリアルなフィードバックとして採用にいかしていると言っていただけるように。
 こうした活動もあって、現在は規模問わず、累計800社以上の企業と、求人掲載や合同説明会などでご一緒しています。
ワンキャリアの取引実績。公式資料より抜粋
 今年6月には、ONE CAREER上での求人掲載やオンライン説明会の配信、採用計画の管理ができるクラウドサービス「ONE CAREER CLOUD(ワンキャリア クラウド)」をリリースしました。
 すでに、大手メーカー、商社、外資系コンサル企業など多くの企業にご導入いただいており、「クチコミから学生の『本音』が知れる」「最新の就活生の動向がわかる」と評価をいただいています。
 従来の就活ナビサイトとの違うのは、学生の体験情報などをもとにした「実際の選考データ」を使って市場や採用競合の分析ができること。
 さらに学生からの採用エントリーの受付も、クラウドでワンストップに行えます。
 たとえば前年度までの選考データから「東京大学の学生を集めるために、いつどういった採用イベントをやればよいのか」の算出なども可能です。
iStock:andrei_r
 他にも、自社を志望する就活生の選考やインターンの情報を分析すると、思わぬ採用競合が見つかるケースがあります。
 ある化粧品会社は、競合は他の化粧品会社だと思っていたら、実はインターネット広告代理店が競合でした。
 そこで、競合となる企業の採用プロセスや学生の評判を徹底的に分析し、差別化を意識した「マーケティング寄りの訴求」に切り替えた、なんて事例も。
 今までになかったデータによって、少しずつですが人事側の意思決定に影響を与えられているのも感慨深いです。

人生のマストハブなサービスを目指す

 では、なぜ新卒領域から事業をスタートしたのか。
 大人数のキャリアデータを集めて、短期スパンでの黒字化を目指すのであれば、母数の大きい中途領域のほうが合理的です。
 それでも新卒領域から入ったのは、就活時から「データをもとにしたキャリアの意思決定」をサポートしたかったから。
 社名の「ワンキャリア」にも、就職や転職=「点」のタイミングだけでなく人生=「線」の上でキャリアを捉えられる世界をつくりたい、という思いを込めています。
 その布石として、今年6月には転職サイト「ONE CAREER PLUS(ワンキャリアプラス)」をリリースしました。
 このサービスでは、社会人が「どこからどこへ転職したか」「転職の理由や軸は何か」をクチコミで可視化します。
 今はβ版ですが、ゆくゆくはONE CAREERのデータとも掛け合わせて、就職から転職まで、すべてのキャリアの意思決定をデータで見られるプラットフォームを作ろうと画策中です。
 目指すのは、「キャリアのシミュレーション」サービス
 年齢や家族構成、年収を入力するとおすすめされる保険商品のように、理想の仕事や望ましいライフスタイルをもとにその人にあったキャリアプランをレコメンドする。
 それが実現できたら、就転職シーンの新たな指針になるのではと考えています。
 個人のキャリアの可視化が進むと、企業の採用スタイルも変わるでしょう。
より、求職者のキャリアの動向を鑑みてデータドリブンに採用戦略を立てられますし、オファーひとつをとっても、過去のデータをもとにメッセージの一文字一文字まで細かく精査できる。
 面接の際にも、「うちの会社ではこんなスキルが身につけられる」「辞めた人は次こんな会社に転職している」と、実際のデータをもとにフラットな議論ができます。
 個人情報の利用には十分な配慮した上で、ですが、企業にとっても求職者にとっても、よりよいマッチングを生み出せると確信しています。

「重たいマーケット」だからHRは面白い

 スケールの大きな話になりますが、このデータの可視化の取り組みは国家レベルの課題解決にもつながると思っています。
 将来的な人口減が予測されるなかで、全業界での人手不足は深刻な課題です。
 その解決のため、国は産業ごと、職種ごとの最適な人材戦略を打ち立てる必要がありますが、その意思決定に必要なデータがまだまだ足りていません。
 特に、今成長産業に人が流れていないのは深刻な問題です。
 もちろん、個人ベースでは好きにキャリアをひらくべきですが、国家レベルで見たときに、本当にそれが最適かは議論の余地があると思います。
 そこで、私たちはデータを用いながら、こうした新たな戦略を考えるお手伝いをしていきたい。
 そして、まだ構想段階ですが、キャリア教育への拡大も視野にいれています。
 先ほどお話ししたように、長いスパンで人生のキャリアをサポートするのであれば、「自分がどう生きたいか」を、就活よりももっと早い段階で考えるべきだと思っています。
 どれも、実現まではまだまだ道のりは遠いですが、それくらいキャリア×データの領域にポテンシャルを感じています。
 個人、企業、国。キャリアに関わるすべての人をエンパワーメントして、日本の「仕事選び」を良くし続けていきたいと思っています。
 先のビジョンまでお話ししましたが、今はまだこの挑戦の一合目にも至っていません。
 まだまだ、やらなくてはいけないこと、やりたいことが山積みです。そこで、実現に向けて一緒に走ってくれる仲間を募集しています。
 誤解を恐れずに言えば、HRは「重たいマーケット」です。
 人の人生や生活を預かって、その方がより豊かになるためのサービスを提供する。大きな責任が問われますが、言葉では言い尽くせないほどやりがいに溢れています。
 実は、ワンキャリアにはHRの出身者が全体の10%ほどしかいません。
 ほとんどのメンバーがこの大きくて重たいマーケットを、じっくり腰を据えて変えていく。この点に魅力を感じてジョインしてくれています。
 特に今、足りていないのがプロダクトや事業を創れる人材です。
 いろんな構想はあるのに、まだ実行段階に込めていない。「もっとこんなサービスのほうがいいですよ」という意見をぶつけてくれる人も歓迎です。
 ぜひ、一緒に大きなチャレンジを仕掛けていきましょう。
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