2回接種後に感染した20~50代、死者ゼロ…大阪府まとめ
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解釈に注意が必要な記事だと思います。
ワクチン接種歴別に重症化率や死亡率を並べて比較をさせるようなグラフが描かれていますが、このデータの元になった各グループの人の背景情報が大きく異なる可能性があります。そしてその背景情報の違いが重症化率などに影響を及ぼしている可能性が高いと思います。
このため、このデータを安易に解釈してしまうと間違う可能性を含みます。このようなデータをグラフで見せ、比較をさせるのは、本来不適切でミスリードだと思います。
ただし、ワクチンの有効性に関しては、すでに数多くのデータが国外で蓄積されており、背景因子の調整後にも一貫して見られている有効性ですので、最終的な解釈自体はそれらと相違のないものになると思います。このため、「本来」としておきました。
なお、このようなデータをもとにして「重症化予防効果」がハイライトされがちですが、ワクチンには発症予防効果や感染予防効果も期待ができます。ワクチンの有効性を0か1かの切り口で見てしまうと間違いますのでご注意ください。報道されている数字は、条件がバラバラであるため単純な比較はできず、またワクチンを打てば20~50歳代の死亡リスクがゼロになるという意味ではないため解釈には注意が必要ですが、「死者ゼロ」というインパクトのある報告は、予防接種を迷っている人の背中を押すことになるかもしれません。
ワクチン接種がより早い時期に普及した米国では、ワクチン未接種者の入院リスクが、接種者に比べて約30倍高くなることが報告されています。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7034e5.htm
こういったデータと比較してみても今回報道された数字は妥当な結果と言えると思います。接種検討に役立つ有益な情報を提供していると思います。
<結果のまとめ>
調査方法:大阪府による2021年6月1日~10月17日の大阪府内の感染者へのワクチン接種歴の調査。
結果:(年齢層間の接種率の違いは約50~約88%)
60歳以上未接種、死亡率4.6%、重症化率6.1%
60歳以上ワクチン2回接種後14日以降(以降2回接種)、死亡率1.6%、重症化率1.9%
40-50代未接種、死亡率0.3%、重症化率2.2%
40-50代2回接種、死亡率ゼロ、重症化率0.1%
20-30代未接種、死亡率0.01%、重症化率0.2%
20-30代2回接種、死亡率ゼロ、重症化率ゼロ
記事にある「無症状感染者が感染を広げる可能性」の指摘には強く納得します。若い世代単独でも「死亡・重症化抑制」メリットはあるはずなのですが、高齢世代に比べると小さいことから、(同世代を抜き出して考えた場合)接種動機につながりにくいと言われています。若い世代がワクチン接種を通じて「社会貢献=ボランティア」という考え方が広まればより高い接種率につながると感じます。(=社会全体に対してはすべての年齢層にワクチンの接種を広げる意義は大きいとして)
留意点と調査の限界については以下の通りだと思います。
(1)「感染者のみへのワクチンの接種歴の調査」ですので、「ワクチン接種の有無別の感染への優劣」はわかりません。
(2) 群間の比較をするのであれば、背景因子が揃っていることが前提になりますが年齢層別の比較については全数調査をしても背景因子(基礎疾患の有無等)はもともと揃っていません。
(3) 「同年齢のワクチン接種の有・無」群間の背景因子が揃っていない場合であれば年齢層間の比較としては正確な実態を示さない可能性があります。(ただし年齢層間の接種率の違いは約50~約88%と比較的高いことから、大きなバイアスを生んでいる可能性は低いと思われます。)