この冬の電力需給 過去10年間で最も厳しい見通し
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注目のコメント
数か月前にNPで「この冬の需給は非常に厳しい」とコメントした通りです。
東京電力管内は数か月前、火力発電の定期点検時期の調整など尽くした上でも、「予備率がマイナス」でした。「予備率がマイナス」というのは、電力会社にいたことのある人間にとっては、衝撃的すぎて呑み込めない日本語。
こんな事態になっている原因は複合的ですが、①福島事故により抜本的に見直された原子力安全規制対応のために原発は殆ど停止、②再エネが補助制度により大量導入されたため、火力発電は再エネの調整・バックアップ役になる。いざという時だけ頼りにされても、メンテナンス費用も十分回収できないので火力発電は廃止しようということになる。自由化されたので供給責任も負ってないし、といった状況です。
喫緊出来ることとして、②に書いた理由で廃止する予定だった火力発電や、電力足りない時に電気の使用を停止する需要家を「公募」を実施して、お金払って再立ち上げしてもらったり、いざという時は止めてもらうということで、東電管内は何とか3%予備率確保までたどり着きました。
これ以外にできることというと、原子力の再稼働です。基本的な安全対策はすべて終わっているのに、テロ対策設備追加の猶予期限終了に伴い、先日停止させた美浜原発など、「本当に今止めなければだめか?」を考えることは一つあり得ます。が、原子力規制委員会は、原発の安全性だけ考えれば良い組織として設立されているので、エネルギー不足によるリスクなどは「考えなくて良い」のです。米国では、原子力規制委員会とエネルギー省を議会がブリッジするかたちで、リスクを総合評価しますが、日本は放置。
総合的に考えて「それでも動かさない」と覚悟するなら良いのですが、今は議論すらない訳です。
メディアでも、それぞれの事象が単発で伝えられることが多いですよね。美浜原発の停止は原発の問題、火力発電は気候変動対策の文脈、電力不足はこの冬の事象あるいは生活への影響みたいな形で伝えられることが多いので、日本のエネルギー政策の歪みや軋みが消費者の皆さんにもわかりづらいだろうと思います。
以前、原発を使わないリスクを述べたときに「命か経済か」と言われましたが、値上げや電力不足も、命の問題を引き起こします。
https://ieei.or.jp/2018/03/takeuchi180315/皆に賛同されやすい呼びかけは、受け入れてもらいやすい国民性だと思いますので、岸田さんには以下の呼びかけをおこなってもらえると嬉しい。
・景気をこれ以上悪化させないために工場や店舗や営業所などのビジネス用途の電力を安定供給したい
・そのために一般家庭での節電をお願いしたい
・具体的には照明をLED電球に買い替えたり、エアコンを使う時間を減らして替わりに電気毛布を使ったり、エアコンの設定温度を一度上げたり。
・節電すれば家計にも優しい
・皆が節電に協力すれば原子力発電も減らせる可能性がある
NEDOに依頼すれば家庭の節電効果が高い施策なんてすぐに解答がくるはず。
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追記
環境負荷が下がるという文言は、おそらく正確には正しくないと思いますので削除させていただきました。
正確には節電が進み一般消費者向けの電力需要が減れば需要を満たす発電量が減るため、発電にかかる温室効果ガスを減らすことができる、が正しいかと思います。発電した電気の多くは蓄電することができないので節電した分だけ環境負荷が下げられるわけではないと思います。
失礼しました。