2021/10/27

【尾原和啓】フェイスブックが「メタバース」に本気になる意味

「メタバース」というキーワードがバズワード化しつつある。
「メタ(meta:超)」と「ユニバース(universe:宇宙)」から生まれたこの造語は、英語で「metaverse」と書く。
ひとことで言うと、インターネット上の仮想空間だ。メタバースという「もう一つの現実」で人々はアバター(分身)として活動できる。
一気に注目を浴びることになったのは、今年7月、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、今後5年程度でソーシャルメディア企業からメタバース企業への移行を目指すと述べたことが大きい。
さらに最近では、フェイスブックは、メタバース事業に重点を置くためのリブランディングとして、社名変更する計画まで報じられている。
メタバースは、広い意味では、3月にニューヨーク証券取引所に上場した子ども向け人気ゲーム運営会社、米Roblox(ロブロックス)もメタバースを実現することを掲げている。
また、米エピック・ゲームズが手がける人気ゲーム「フォートナイト」もメタバースの一例と言われる。
こうしたメタバースの流れは、エンターテインメント分野で進んできたが、今後は、コロナで広がったリモートワークという働き方にも大きく影響を与える。
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グーグルでの勤務や楽天で執行役員も歴任したIT評論家・尾原和啓氏は、シンガポールやインドネシア・バリ島など完全なリモートワーク生活を6年以上も続けてきた。
著書『仮想空間シフト』の中でも、これからメタバースの世界が大きくなっていく社会的変化について論じている。
メタバースで生きることとは一体何なのか。前編・後編のミニ特集で迫っていく。
 後編の記事は、あす(10月28日)公開します。
INDEX
  • 2軸でメタバースを理解する
  • 世界で広がる「捨てアカウント」
  • 明確な目的→リモートが最適
  • 物理空間と仮想空間にいる自分
  • 日本にメタバースがチャンスな理由
尾原和啓(おばら・かずひろ)IT批評家
京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立ち上げ・投資を専門とし、経産省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーを歴任。現在14職目、近著に『アフターデジタル』(共著)や『プロセスエコノミー』。(撮影:干川 修)

2軸でメタバースを理解する

──今、にわかにメタバースという言葉が流行り始めています。この動きをどう整理できるでしょうか。
尾原 私はメタバースの世界が成立するために、社会における4つの変化があると考えています。
それは、