2021/10/10

【根幹】ターリバーンを生んだ「難民問題」のいま

静岡県立大学国際関係学部 准教授
今月の「プロピッカー新書」はアフガニスタンがテーマ。
米国による約20年間の介入が失敗に終わった現地だが、実は古代から現代に至るまで、数々の大国に干渉されてきた歴史を持つ。
なぜアフガンは、そうした運命に直面するのか。タリバン政権が復活した今後はどのような社会になっていくのか。そうした変化が国際社会にもたらす影響とは。
日本ではあまり知られていない現地の地理、歴史、文化について、イスラーム社会を研究する静岡県立大学准教授・塩崎悠輝氏が全4回で解説する。
INDEX
  • 世界最大の難民出身国
  • 隣国パキスタンの苦悩
  • こうしてターリバーンの勢力は広がった

世界最大の難民出身国

アフガニスタンは、少なくとも1980年から2010年まで、全世界で最も多く難民が出ている国でした。
1979年12月にソ連のアフガニスタン進駐が起きた時から、アフガニスタンの難民問題は始まっています。2011年からはシリア内戦が始まったので、シリアから出る難民の方が多くなりました。
アフガニスタンの難民問題が無ければ、ターリバーンは現れなかったでしょう。アフガニスタンの問題は、難民問題があったからこそ諸外国に認識された、というところがあります。
最も多くの難民が押し寄せた隣国のパキスタン、次いで多かったイラン、さらにはヨーロッパまでアフガニスタン難民が移動してきたことで、アフガニスタンで起きている紛争が認識されました。
世界で起きている大部分の紛争は、自分の生活圏内に影響が出るまで、認識さえされません。