2021/10/3

【解説】アフガンでターリバーンが力を持った根源的理由

静岡県立大学国際関係学部 准教授
今月の「プロピッカー新書」はアフガニスタンがテーマ。
米国による約20年間の介入が失敗に終わった現地だが、実は古代から現代に至るまで、数々の大国に干渉されてきた歴史を持つ。
なぜアフガンは、そうした運命に直面するのか。タリバン政権が復活した今後はどのような社会になっていくのか。そうした変化が国際社会にもたらす影響とは。
日本ではあまり知られていない現地の地理、歴史、文化について、イスラーム社会を研究する静岡県立大学准教授・塩崎悠輝氏が全4回で解説する。
INDEX
  • 「ターリバーン」の意味とは
  • マドラサは数少ない「動員できる集団」
  • イスラーム学者が統治を行う謎
  • 近代国家は目標としない
  • ターリバーンの政策的特徴
  • ムスリム諸国の多くはここまでやらない
  • ターリバーンと難民問題の関係性

「ターリバーン」の意味とは

今回は、アフガニスタンの政権を掌握した「ターリバーン」について、彼らが力を持った要因について詳しく見ていきます。
アラビア語やペルシア語で「学生」を意味する、「ターリブ」という単語があります。ペルシア語だと、その複数形が「ターリバーン」です。ターリバーンというのは「学生たち」という意味です。
テレビなどに映るターリバーンは、「イスラーム主義組織」とか「イスラーム武装勢力」と呼ばれています。日本人の視聴者には、あの集団が、日本でいう「学生」には見えないでしょう。
しかし、彼らは元々、学生であり、教師でした。
アラビア語で「学校」全般を意味する「マドラサ」という単語があります。インドやパキスタン、アフガニスタンといった南アジアだと、イスラームについて学ぶ学校のことを指します。