2021/9/30

【石倉洋子】新首相の下で「デジタル庁」をとにかく前に進める

行政のデジタル化を進めるデジタル庁が9月1日に発足してから、約1カ月が経とうとしている。
「菅義偉首相の置き土産」とも言える首相直属の新しい政府機関は、9月3日に菅首相が突如辞意を表明したことで、事実上〝トップ不在〟という異常事態でスタートした。
このデジタル庁で、「デジタル監」という事務方トップの役職に就いたのが、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏(72)だ。
デジタル監のポストを巡っては、8月初旬に、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディア・ラボの所長を務めた伊藤穰一氏(55)を起用するという報道もあった。
しかし、伊藤氏は、アメリカで少女性的虐待と人身取引を行っていたジェフリー・エプスタイン(故人)がMITメディアラボの大口スポンサーだったことで、同所長を辞任に追い込まれていた。この経歴も影響し、伊藤氏の就任はお蔵入りとなった。
その一方で、デジタル庁のトップ不在もまもなく解決する。
9月29日の自民党総裁選で、岸田文雄氏が新総裁に選出され、デジタル庁のトップに「岸田次期首相」が就くことになる。
足元では、デジタル庁幹部への接待問題もくすぶる中、激動の船出となっているデジタル庁。
その舵取りを担う経営学者の石倉氏は、数多くの企業で社外取締役をした経験を生かし、日本のデジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)を進められるか。
NewsPicks編集部は、石倉氏に独占インタビューを敢行。5400億円という予算を持つデジタル庁がこれから目指す具体的な道筋と思いを聞いた。
INDEX
  • 紙文化・メール文化に驚き
  • 呼び方を「○○さん」に統一
  • ワクチン証明アプリは「象徴的」
  • 「やらない言い訳作り」をさせない
  • モチベーション維持できる理由
  • 新首相の下でも前進する

紙文化・メール文化に驚き

──9月1日のデジタル庁発足から、約1カ月が経ちました。実際にデジタル庁の業務が始まって、就任当初の思いとの違いはありますか。
石倉 なんだかよく分からない間に就任したということもあり、最初は「あぁ始まったね」というくらいでした。