2021/9/14

【解説】崖っぷち新生銀行に「白馬の騎士」は現れるのか?

NewsPicks 編集部 記者・編集者
ネット金融大手SBIホールディングス(HD、以下SBI)による新生銀行に対する株式公開買い付け(TOB)が敵対的買収に発展する可能性も出てきた。
SBIがTOBを発表した9月9日、新生銀行は事前の連絡を受けていないとして、TOBは「当行取締役会の賛同を得て実施されたものではありません」と発表。早ければ今週中に対応策を公表するとみられている。
地銀再編も含めた、大きな動きに発展しうるSBIによる新生銀行のTOB。次の展開の前に、ポイントを押さえてみよう。
INDEX
  • 1月の「裏切り」
  • 買付価格 2000円は高い?
  • シナジーはある?
  • 公的資金返済は?
  • ホワイトナイトは現れる?

1月の「裏切り」

まずは、SBIが仕掛けたTOBの概要を確認してみる。
【SBIによるTOB概要】
・SBIの新生銀行持株 20.32% → 最大48%
・買い付け価格 1株当たり2000円
・総額 約1164億円
・期間 9月10日〜10月25日(30営業日)
市場はSBIが提示した2000円という買付価格に反応し、すでに新生銀行の株価は大きく上昇している。
SBIは2019年4月から新生銀行株の取得を始め、金融機関とともに地域活性化に取り組む「地方創生パートナーズ」を共同設立するなど、友好的な関係にあった。SBIは資本業務提携についても継続的に提案するなど、関係強化を探ってきた。
良好な関係が一転したのは今年1月。きっかけは、新生銀がマネックスグループと金融商品仲介業務で包括提携したことだった。
2022年1月から新生銀の投資信託口座や証券口座をマネックス証券に移管する内容で、新生銀は、SBIが最も期待を寄せてきた証券業務のパートナーにマネックスを選んだことになる。
これはSBIにとっては「裏切り」に映ったようだ。SBIHDの北尾吉孝社長は、雑誌のインタビューで新生銀に対して露骨に不快感を示している。
「突然、新生銀がマネックス証券との提携を2021年1月に発表した。SBI証券が新生銀と提携すべく新生銀と協議をすることを決め、(新生銀がマネックス証券との提携を発表する半年前から)提案しており、新生銀の担当も『SBIがいい』と話していたのに。

その間の経緯については全く知らないが、これは何のシナジー効果もない。われわれも(大株主としての)発言権があるわけだから、今後、それを、行使していきたい」
(毎日新聞出版『週刊エコノミスト』2021年8月17日号)
実際、SBIは6月の新生銀行の株主総会で、複数の取締役選任議案の一部に反対票を投じるなど、SBIと新生銀の間には緊張感が高まっていた。
友好関係から始まったSBIと新生銀の関係。だが、SBIの突然のTOB発表で関係は大きく変わった。新生銀の経営陣は警戒を強め、対抗策を講じているとの報道もある。
今回のSBIによる新生銀へのTOBのポイントを、銀行業界にくわしい野﨑浩成・東洋大学教授に聞いた。

買付価格 2000円は高い?