(ブルームバーグ): 西武ホールディングス(HD)は、国内外のホテルやレジャー施設の一部売却先候補として、米ブラックストーン・グループやモルガン・スタンレー系の不動産ファンドなど3社を選定した。「ザ・プリンスパークタワー東京」などの売却を検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

匿名を条件に語った関係者らによると、このほか、シンガポールの政府系投資会社GICも候補に残っているという。西武HDは年内に売却先を最終決定し公表する考え。実際の売却時期は市況をにらみながら決める。

ブルームバーグの報道を受けて、西武HDの株価は前営業日比で一時4%高の1373円まで上昇した。

西武HDは5月に公表した中期経営計画などで、一部資産の売却構想を明らかにしていた。所有するホテルやレジャー事業資産の約5分の1に当たる1000億円相当(簿価ベース)の資産を売却して身軽になる一方で、運営は引き続き担う計画だ。西武HD側のフィナンシャル・アドバイザー(FA)はみずほ証券が務める。

西武HDの広報担当者は、売却先や対象資産について決定した事実はないとした上で、これまで一体だったホテル資産の「運営」と「資産保有」を分離することで、双方の能力を高める方針だと説明。「今回のようなパンデミックにも耐えうる、レジリエントでサステイナブルな体質を作っていく」と電子メールでコメントした。

ブラックストーンとモルガン・スタンレーの両広報担当者はコメントを控えた。GICからのコメントは得られていない。

鉄道会社によるホテル資産売却を巡っては、近鉄グループホールディングスがブラックストーンへの所有ホテルの一部譲渡を3月に発表した。ブラックストーンは当時、新型コロナウイルス禍で稼働率が高くないうちに客室改装などの競争力を高める投資をしていくと言及。不動産の所有と運営の分離には、本業を抱える事業会社に代わって資金力のある投資家が機動的な投資を実行できるメリットがある。

緊急事態宣言の発出などコロナ禍による陸運・レジャー産業への影響は大きく、西武HDの2021年3月期の連結決算は723億円の純損失だった。22年3月期の業績予想は50億円の純損失と赤字幅は縮小する見通し。

野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストらは3日付リポートで、鉄道事業者の今期業績について、旅客数の回復は遅れ気味だが、コスト削減の進展や今後のワクチン普及により回復が見込まれるとの見方を示した。

(2段落目の「シンガポール系の投資運用会社GLP」を「シンガポールの政府系投資会社GIC」に訂正します)

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