【基礎から理解】アフガンを制圧した「タリバン」って何者?
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米国は、最初から何をしたいのか、はっきりしていませんでした。2001年9月11日にニューヨークで攻撃されたので、落とし前をつけなければなりませんでした。しかし、実行犯たちは、航空機で体当たりして、死亡していました。
こぶしの振り下ろしどころを探した米国は、アフガニスタンに攻め込むことにしました。アル=カーイダとウサーマ・ビン・ラーディンが注目され、彼らが滞在していたアフガニスタンが攻撃されることになりました。当時のアフガニスタンで政権を持っていたターリバーンも攻撃されることになりました。
それから20年間、米国は2兆ドルを費やして、アフガニスタンの新しい政府をつくってきました。米軍兵士も3千人以上死亡しました。その20年間の国造りは、ほぼ不毛であったことは、今回、アフガニスタン政府軍が戦いもせずに雲散霧消してしまったことが雄弁に物語っています。そして、アフガニスタン人は20万人以上が戦争で死亡しました。
米国は、こぶしを振り下ろしたかっただけなのに、その後の流れで2兆ドルを費やし、あまり実りのない不毛なことをやっている、というのは、もう何年も前からわかっていました。バイデン大統領も、10年以上前からこの不毛さにウンザリしていた1人で、今回、アフガニスタンの国造りにはもう関わらない、ということを断言しました。
米軍の使命「国造りでない」とバイデン氏
https://nordot.app/800097175498162176?c=113147194022725109
米国は何がしたいか自分たちもよくわからないまま20年間戦争をして、2兆ドルを使って成果のあがらない国造りをしてきました。消えた2兆ドルは、国外逃亡した傀儡政府の幹部たちが、スイスなどに蓄財しています。
米国は、ベトナムでもイラクでもそうでしたが、国造りをする覚悟などありませんでした。アフガニスタンは、ターリバーンが普通に受け入れられてアッという間に全土を掌握できるような社会なのですから、米国が造りたいような米国好みの近代国家をつくりたければ、まずそこにある地域共同体、家父長制、伝統、宗教などを潰さなければ無理です。ちょっと女子教育をしたくらいで変わるものではありません。
そういう覚悟も無い米国が、アフガニスタンに手を出して、何もできないまま去っていくことになりました。私も決してタリバンについて専門ではないのですが、若干誤解を招く表現が見られます。
例えば
>>>タリバンの源流についてイスラム原理主義の「ムジャヒディーン」と呼ばれる人々が蜂起し、ソ連との間で激しい戦闘を繰り広げた。
このムジャヒディーンのメンバーが独立して立ち上がった組織こそ、後のタリバンだ。
などがそうです。
確かにタリバンの創設者ムハンマド・オマルもムジャヒディーンの兵士として従軍した記録はありますが、タリバンの源流はむしろ逆のところにあります。
1989年にソ連が撤退すると、ムジャヒディーン達は軍閥化し、アフガニスタンは分裂。壮絶な内戦に突入します。
神学校の教師をしていたオマルはこの軍閥化したムジャヒディーンが人々を苦しめているのだと考え、ムジャヒディーンの武装解除と解体を標榜して、1994年11月に神学生ら20人とともに蜂起しました。これがタリバンです。
そもそもムジャヒディーンを解体するために蜂起した組織を、そのメンバーが独立して作った組織と説明したら、なぜタリバンが20年前も、そして今回も国民の支持を受けたのか、その理由が全くわからなくなってしまいます。
一方アル・カーイダは間違いなくムジャヒディーンが源流の組織ですが、アフガニスタン人の組織ではなく、パキスタンとアメリカが支援するソ連と戦うための外人部隊“アクダル・アブ・ヒダマト(MAK)“を母体とする組織です。
創始者のウサーマ・ビン・ラーディンの実家ビン・ラーディン財閥はこの組織の有力なスポンサーの1つでした。
ソ連軍の撤退によってMAKは用済みとなっていましたが、ウサーマはこの組織を乗っ取り、ソ連だけでなく世界中のイスラムの敵と戦う組織に鞍替えしたのです。
MAKがアル・カーイダに鞍替えしたのは、タリバンと同じ1994年のことでした。
こうしてみるとこの2つの組織は同じイスラム過激派に見えて、出生も、目的も全く違うことがわかります。
又両者ともスンニ派ではありますが、宗派は異なり、タリバンはハナフィ法学派に属するデーオバンド派、アル・カーイダはハンバル学派に属するワッハーブ派で、教義自体や過激さもだいぶ違います。
日本人には直感的に理解しずらい世界ではありますが、できるだけ単純化せず、正しく理解するように心がけたいですね。中東のアフガニスタンで、タリバンが政権を掌握しました。ずっと駐在していたアメリカ軍が撤退するスキを狙い、僅かな期間で国家を転覆させた形です。
ただ、一連の報道を見ていると
・タリバンとは、そもそも誰なのか
・アメリカ軍はなぜ駐在していて、なぜ突如、撤退するのか
・今後の国際社会への影響は
といった疑問がつきません。こうした「そもそも」の部分を基礎から解説します。ぜひご一読下さい。
蛇足ですが…
シルベスター・スタローン主演の「ランボー3怒りのアフガン」の舞台でもあるアフガニスタン。
米軍の大佐が、侵攻してきていたソ連軍の捕虜になってしまい、それをランボー(スタローン)が助けに行くというものです。
一人で強大なソ連軍に立ち向かうため、当然ランボーは苦戦を強いられますが、そこで助太刀してくれたのこそ、タリバンの源流で、この記事にも登場するムジャヒディーンです。
映画の最後、エンドロールの直前には、憎きソ連に対して一緒に戦ってくれたムジャヒディーンに対して「この映画を勇敢なムジャヒディーンの戦士に捧ぐ」(THIS FILM IS DEDICATED TO THE BRAVE MUJAHIDEEN FIGHTERS OF AFGHANISTAN)というメッセージが映し出されます。
ムジャヒディーンに参加していたメンバーの一人こそ、後にタリバンを発足させる悪名高きテロリスト、ムハンマド・オマルです。
映画はアメリカという国家の「公式見解」ではありませんが、国際政治の舞台において普遍的な「正義」というものがいかに乏しく、すべてがその時時の損得、リアリズムで動いているかを知らしめるエピソードだと感じます。