2021/8/10

【提言】日本は「ムダな仕事」の大国だ

「人間は根源的に悪である」という冷笑主義を否定し、新たな現実主義を説く、世界46カ国に衝撃を与えた新世代のベストセラー『Humankind 希望の歴史』。

筆者の歴史家、ジャーナリストであるルトガー・ブレグマンへの直撃インタビューの後編では、突然のように進み始めた米国のベーシックインカム化、そして、日本という国の"本質"へと入り込んでいく(前編はこちら)。
INDEX
  • ①小人の肩に立つ小人
  • ②「新自由主義」は死んだ
  • ③ベーシックインカムが動き始めた
  • ④日本はブルシットジョブの天国
  • ⑤日本が眠ってしまった理由

①小人の肩に立つ小人

──前編でのパラドックスを聞くと、スティーブ・ジョブズ以来のテクノロジー業界のイノベーターたちの功績についても、改めて考えさせられます。
それは本当に重要な指摘です。
我々は個人や特定のリーダーを過大評価してしまうこともあります。もちろん重要でないとは言いませんが、そもそも富の創造とは何かという問いに立ち返ることも必要です。
人類が他の動物と一番異なるのは、非常に協力的だからだということを再認識しなければなりません。逆に、他の動物にはできない規模で協力できるということは、個人レベルではそれなりのバカだということでもありますよね?
実際、我々は自分の周りの世界についてほとんど何も理解していません。
今目の前にあるカメラも、iMacも、スマホも、今朝食べたものも、全部自分ひとりでは作れません。周りにあるほとんどの物については、何もわかりませんし、自分の属する組織やシステムについても同様です。
私は文章の書き方についてはそれなりに専門家ですが、自分が取り上げる研究の細かいディテールについてはわからないゼネラリストです。だから、狩猟採集民と比べると、信じられないほど無能なのです。
定住しない狩猟採集民は、自分の身は自分で守る能力は現代人より優れていた。しかし、その彼らでさえ友人に頼っていました。
友好的な人が生き残るというのは、ここから来ているのです。