2021/8/1

10分で配達。「高速食材デリバリー」競争が始まる

INDEX
  • 新星「ゲティール」の躍進
  • 手ごろな「自分へのご褒美」
  • 市場シェアの取り合い
  • トルコで2番目のユニコーン
  • 「ダークストア」という秘策
  • 従業員の大半は「正社員」
  • 競合は「地元のコンビニ」

新星「ゲティール」の躍進

ウーバー・イーツ、ジャスト・イート、デリベロー(Just Eat and Deliveroo)の自転車やスクーターに交じって、ロンドン中心部を猛烈な勢いで走り回っている食品デリバリー企業、それがゲティール(Getir)だ。
トルコから新規参入したこのスタートアップは、チョコレート・バーやアイスクリームへの渇望をほぼ瞬時に満たすことを約束している。注文からわずか10分で、食料品を届けるというのだ。
地域に張り巡らせた倉庫のネットワークを駆使するゲティールの配達スピードは驚くべきものだが、同社の最近の拡大ペースもそれに劣らない。5年半かけてトルコで開発したビジネスモデルをひっさげて、今年ヨーロッパに乗り込み、一気に6カ国にサービスを拡大した。ライバル企業を買収し、2021年末までにニューヨークを含む少なくともアメリカの3都市に進出する見込みだ。しかも、こうした事業急拡大の資金として、わずか半年で10億ドル近くを調達した。
「進出する国を増やす計画を加速しました。うちがやらなければ他社がやるからです」と、ゲティールの創業者ナジム・サルールは言う(ゲティールとはトルコ語で「運ぶ」の意味)。「時間との競争です」
サルールが同業他社の動きを意識するのも当然だ。ロンドンだけでも、過去1年ほどでスピードを売りにした食料品配達会社5社が市場に参入している。フィラデルフィアに拠点を置くゴパフ(Gopuff)は今年3月、ソフトバンクのビジョンファンドを含む投資家から15億ドルを調達した。その1月後、食料品だけでなくレストランの料理も配達する設立6年目のスペイン企業グロボ(Glovo)が5億ドル以上を調達した。
ゲティールの創業者ナジム・サルール(Tamer Yilmaz)