2021/7/20

バズワードからインフラへ。進化する「メタバース」の現在点

INDEX
  • コロナで活性化した「仮想世界」
  • メタバースの「本質」とはなにか
  • 「ディセントラランド」という実験場
  • 「セカンドライフ」となにが違う?
  • 『フォートナイト』の勢いが止まらない
  • 10代の富豪を生む「ロブロックス」
  • 仮想世界どうしを「つなぐ」
  • 万人が「解放」される世界

コロナで活性化した「仮想世界」

テクノロジー分野では、ある偉大なアイデアの意味がはっきりする前から、それを示す言葉が生まれることがよくある。「IoT(モノのインターネット)」しかり、「シェアリングエコノミー」しかり、「クラウド」しかり。十分な説明もないまま、専門用語がどこからともなく現れて、広く使用されるのだ。
まれに、その用語が定着することがある。ゆるやかにつながり合った多くの事象が、大勢の人々によって盛んに議論され、それが一つの曖昧な概念へと統合される。そして、私たちは永遠にその中で生きていく。「インターネット」という言葉を聞いたときのことを覚えているだろうか。次にくるのは「メタバース」だ。
この言葉が生まれたのは、デジタル時代の黎明期だ。ニール・スティーブンスンの1992年の小説『スノウ・クラッシュ』に登場し、アーネスト・クラインの小説『レディ・プレイヤー1』(邦題『ゲームウォーズ』)では「オアシス」と表現された。
スピルバーグによる映画化も話題を呼んだ『レディ・プレイヤー1』(Slaven Vlasic/Getty Images)
メタバースとは、私たちが生きているアナログな世界を超えて存在する、完全に現実化されたデジタルの世界を意味する。
フィクションの世界では、メタバースはユートピアとして描かれることもある。硬直した文化や経済から解放され、社会的規範や価値観が書き換えられた、新たなフロンティアというわけだ。
もっとも、どちらかといえばディストピア──堕落した世界からのバーチャルな避難場所──として描かれることのほうが多いだろう。
バズワードとしての「メタバース」は、パンデミック下であらゆるもののオンライン化が進む中で活性化した、仮想の体験、環境、資産などを指す。これらの新しいテクノロジーは、インターネットの次世代の姿を示唆している。