2021/7/24

【銀のさら 社長】感謝の気持ちに気づいたら事業が好転した

ライター&編集者
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出の自粛や飲食店の休業などを受けて、フードデリバリー需要が増加。その中、順調に売り上げを伸ばすのが、宅配寿司「銀のさら」を手掛けるライドオンエクスプレスホールディングスだ。2021年3月期の売上高は253億円(前期比20.7%増)、経常利益は24.3億円(同84.9%増)を達成。過去最高益を更新した。

宅配寿司における「銀のさら」のシェアは50%を超え、圧倒的ナンバーワンだ(※富士経済「外食産業マーケティング便覧2020」より)。かつて宅配寿司チェーンは、宅配ピザチェーンよりも多く存在したというが、なぜ「銀のさら」だけが生き残り、急成長を遂げたのか。

創業者で社長の江見朗氏の半生を振り返りつつ、その秘密を「商品づくり」「販促」「ビジネスモデル」「怒らない経営」といった視点から探っていこう。(全7回)
江見 朗(えみ・あきら)/ライドオンエクスプレスホールディングス 創業者・社長
1960年大阪府生まれ、岐阜県育ち。79年に県立岐阜高校を卒業後、単身渡米。ロサンゼルスで寿司職人として7年半を過ごして帰国後、92年に松島和之氏(ライドオンエクスプレスホールディングス副社長)とサンドイッチ店「サブマリン」を岐阜市内に開業。98年、宅配寿司「銀のさら」に業態転換。全国にフランチャイズ展開し、急成長を果たす。2001年、レストラン・エクスプレス(現ライドオンエクスプレスホールディングス)を設立。13年に東証マザーズ上場、15年東証一部に市場変更。
INDEX
  • 「いよいよ終わりか」
  • 感謝の言葉が自然と出た
  • 生きていること自体が奇跡

「いよいよ終わりか」

借金がかさんだり、「江見さんは何も分かっていない」とアルバイトの子が怒って5人ぐらい同時に辞めたり、創業時からのパートナーである松島さんから「朗さん、もう一人でやってください」と言われたり……。
商売をしていると、「いよいよ終わりか」といったことがちょくちょくあります。
宅配寿司を始める前、まだサンドイッチだけで悪戦苦闘していた頃のことです。それまで大小いくつものピンチを何度も乗り越えてきたものの、資金が逼迫して「来月まで持たないかもしれない」という状況に陥りました。
(写真:purple_queue/iStock)
よく死の間際、思い出が走馬灯のように浮かぶという話がありますが、私の脳裏にもいろいろな記憶がよみがえってきました。