2021/7/18

【ドムドム 社長】上司に直談判、入社9カ月で社長に就任

ライター&エディター
今、日本最古のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」が注目を浴びている。ソフトシェルクラブを一匹丸ごと豪快に挟んだ「丸ごと‼カニバーガー」などの斬新な商品でネット上を沸かせ、人気ファッションブランドとのコラボで若者の心をつかむ。

老舗でありながら数年前まで衰退の一途をたどり、2017年にはレンブラントホールディングスに経営権を譲渡。現在、ドムドムの指揮を執るのは、39歳まで就職経験のない主婦だった異色の経歴を持つ藤﨑忍社長だ。社長就任から2年半、2021年3月決算で事業譲渡後、初めて黒字を果たした。

近年、アメリカ発の高級グルメバーガーの上陸を機に、「低価格で手軽」というハンバーガー業界の概念が変わりつつある。その中で、復活の兆しを見せるドムドムハンバーガーの戦略とはどのようなものか。藤﨑氏が、波乱万丈な半生を振り返りながら明かす。(全7回)
藤﨑 忍/ドムドムフードサービス 社長
1966年東京生まれ。青山学院女子短期大学卒。21歳で政治家の妻になり、39歳まで専業主婦だった。夫が病に倒れ、生活のために働き始める。最初はギャルブームの頃のSHIBUYA109のアパレル店長。若い店員とのコミュニケーションがうまく、また店頭ディスプレーのセンスも良く、店の売り上げを倍増させた。次は新橋の居酒屋の女将に。料理の美味しさや接客の良さで一躍人気店になった。その腕を常連客に見込まれ、ドムドムバーガーのメニュー開発顧問に。「手作り厚焼きたまごバーガー」をヒットさせ、ドムドムフードサービスに入社。わずか9カ月で社長に就任する。初の著書『ドムドムの逆襲 39歳まで主婦だった私の「思いやり」経営戦略』を2021年7月に発売した。
INDEX
  • 店長とスーパーバイザーを兼務
  • 「意見を言える立場にして」
  • 入社9カ月で社長に就任
  • 会議で新しいアイデアが出る

店長とスーパーバイザーを兼務

ドムドムフードサービスで私が任されたのは、主にメニュー開発と接客を含む人材育成です。
ところが入社後、3週間の店舗トレーニングを受けたのちに配属されたのは、事業継承後初の出店となった神奈川の厚木店の店長でした。
自宅から片道2時間近くかかりますし、営業時間は8~23時と長い。しかも、オペレーションが確立していないこともあって、すぐに品切れを起こしたりと初歩的な失敗が続出。
基本的なことから正していく必要があり、そのためにはスタッフとの意思疎通が大切だと毎日始発で行って終電で帰るような日々が続きました。
(写真:loveguli/iStock)
4カ月ほど店長を務めたところで、東日本の16店舗を統括するスーパーバイザーを兼務することになり、各店舗をまわることに。
それから間もなくしてドムドムフードサービスが運営を始めて初の決算が出たのですが、それは予想以上に悪いものでした。
2店舗とはいえ、お店を経営してきた立場から見ると、すぐに立ち行かなくなってもおかしくないレベルの業績。
そらきのスタッフやお客様がせっかく「がんばっておいで」と快く送り出してくれたのに、会社がこのような崖っぷちの状況では顔向けができません。

「意見を言える立場にして」

衝撃を受けた私は居ても立ってもいられず、すぐにレンブラントグループの上層部に電話をかけました。
そして、「私を意見の言える立場にしてほしい」と直談判したのです。それは業務の実行に関する権限を持つことを意味します。
入社して半年足らず、まだ何の結果も出していませんから、当然のごとく断られました。
でも、そこで引いてしまっては何の解決にもなりません。私は数字など根拠を明確に示しながら現状の分析と改善点を書類にまとめ、役員にメールで送りました。
それから約1カ月、返ってきたのは予想もしていなかった驚くべき打診でした。