2021/5/24

【中野善壽】ぜんぶ捨てれば、コロナ後の生き方が見えてくる

NewsPicksエディター/音声事業 プロデューサー
コロナ禍による在宅生活で「身の回りの空間」を豊かにする発想が広まっている。
加えて「大量生産/大量消費」に異を唱え、環境に配慮しているモノを購入したり、長く一つのものを大切にする「エシカル消費」といった言葉も耳にするようになった。
そうした流れの中で再注目されているのが、「ミニマリズム」だ。ミニマリズムとは、必要最低限のモノしか持たずに、シンプルに生活を行うスタイルのこと。
日本におけるブームの火付け役である、編集者の佐々木典士氏は、ミニマリズムを実践するミニマリストのことを、「自分に必要なモノがわかっている人」と定義する。
つまり、単にモノを捨てるだけではなく、自分の価値観にしっかりと耳を傾け、本当に大切なモノをしっかりと選び取ることを指すという。
そこで本特集では、ミニマリズムの思想を紐解きながら、コロナ禍でミニマリズムが必要とされる背景や、シンプルに生きるための秘訣について考えていく。
第1回に登場するのは、寺田倉庫・元CEOの中野善壽氏。
中野氏は2011年に、60年続く(当時)老舗企業であった寺田倉庫のCEOに就任。徹底した事業の絞り込みにより、1000人以上いた従業員を1/14に減らし、売上高を1/7、借入金を1/3にまで縮小させる改革を行った。
一方でアート保管事業、ワイン保管事業や、個人向け保管サービス「minikura」などにリソースを集中させ、高利益体質の企業を作り上げた。
実は中野氏は、経済界随一の「ミニマリスト経営者」として知られる。著書『ぜんぶ、すてれば』によれば、家は賃貸暮らし、車も高価な腕時計も持たず、靴や服も、気に入ったものを何年も身につけているという。
中野氏はなぜ、そのようなスタイルに行き着いたのか。経営者として力を振るうために、「モノを持たない」ことにどのような意味があるのか。インタビューを実施した。
INDEX
  • モノを持っても満たされなかった
  • 自分の感情が動くものを選び取る
  • 機能ではなく、感性に訴える
  • 一人の時間をちゃんと作る
  • 「残り時間」を意識して行動する
  • 人類は綱渡りの中を生き残ってきた
  • それでも捨てなかったものは