(ブルームバーグ):

米電気自動車(EV)メーカー、テスラが26日発表した1-3月(第1四半期)決算では、利益が過去最高となった。自動車業界が直面する半導体不足を回避し、製造工程の効率化を進め、仮想通貨ビットコインの売却益も計上した。

それでもテスラ株は決算発表後の時間外取引で一時3.1%下落した。昨年株価は8倍に値上がりし、同社への期待が非常に高まっていたことが背景にあるほか、2021年の納車台数見通しを具体的に示さなかったことを要因に挙げるアナリストもいる。

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、増産を進めてEV市場におけるテスラの優位性を維持する構えだが、ライバル企業も積極的に参入している。マスク氏は26日に需要はかつてなく旺盛だと述べたが、数字には言及しなかったことから投資家は肩をすくめた。

ループ・ベンチャーズのジーン・マンスター氏は「全て良かったが、大したニュースはなく、突出した内容ではなかった。想定されていたことは全て出た」と語った。

ビットコインが後押し

テスラは1-3月期に保有ビットコインの約10%の売却により1億100万ドル(約109億円)の利益を計上した。

1-3月期調整後1株利益は93セントと、アナリスト予想平均の80セントを上回った。クレディ・スイスのアナリスト、ダン・レビー氏はテスラのビットコイン売却益と環境規制に対応する温暖化ガス排出枠(クレジット)の他社への販売、税制優遇措置が調整後1株利益に約25セント貢献したと26日のリポートで分析した。

テスラ、1-3月期に1億100万ドルのビットコイン売却益

半導体不足

テスラは今年、3大陸で事業を拡大する方針で、テキサス州オースティンとドイツ・ベルリンで新工場を完成させる。同社は納車台数の伸び率を「複数年にわたり」前年比50%と予想し、従来の表現を踏襲した。

これは今年の納車台数が約75万台となることを示唆するが、投資家を刺激するには至らず、電話会見でマスク氏からの新たなガイダンスを期待していたアナリストの失望を誘った。

テスラは2020年に約50万台を納車。1-3月期の世界全体の納車台数は18万4800台と、20年10ー12月期を約4000台上回った。

マスク氏は電話会見で自動車メーカーが直面する半導体不足について「非常に大きな問題だ」と述べ、「1ー3月期のサプライチェーン(供給網)の問題は、これまでに経験した中で最も困難なものの1つだ」と指摘。今四半期と7-9月(第3四半期)も半導体不足の影響が続く見通しを示した。

1-3月期の売上高は74%増加し103億9000万ドル(約1兆1200億円)。アナリスト予想平均は104億1000万ドルだった。環境規制に対応する温暖化ガス排出枠(クレジット)の他社への販売は5億1800万ドルと、20年10ー12月期の4億100万ドルから増加した。

テスラは本業のEV製造販売より多くの利益をクレジット販売で稼いでいるが、大手自動車メーカーが独自にEV投入に乗り出し始める中、こうした収益構造は将来的に同社にとって問題となる恐れもある。

原題:Tesla’s Record Profit, Bitcoin Gains Are Met With a Shrug (抜粋)

(マスクCEOやアナリストのコメントを追加し株価を更新します)

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