2021/4/27

【新・音声番組】広告のスペシャリストが「その場でブレスト」

NewsPicks Brand Design editor

新番組「The Planning」

NewsPicksがSpotifyとタッグを組む新しい音声番組「The Planning」が4月27日火曜からスタートする。
毎回さまざまな企業の代表者・担当者をクライアントとして番組に迎え、彼らが抱えるお悩みに対して広告のスペシャリストたちが「生ブレスト」を実施。マーケティングプランをその場で立案する。
↑番組視聴は画像リンクをクリック
初回の悩めるクライアントは、千葉県銚子市を走るローカル鉄道・銚子電鉄。何度も経営破たんのピンチにさらされてきた銚子電鉄は、「ぬれ煎餅」の販売をはじめとするユニークなアイデアで危機打開を試みている。
今回は社長の竹本勝紀氏自ら、次なるマーケティング施策を求めて「The Planning」に参加。コロナ禍以降で銚子電鉄が抱えるマーケティング課題を相談した。
そんな銚子電鉄の課題に挑むのは、マーケター 井上大輔氏(ソフトバンク株式会社)、クリエイター 中村洋基氏(PARTY/ヤフー株式会社)、CMプランナー 村田俊平氏(株式会社電通)の3名。
番組ホストは、お笑い芸人でありながら広告会社に勤務するラランドのサーヤが務めた。
本記事では、番組を終えての感想や、これからの音声/Spotify広告の展望について、出演した井上大輔氏に話を聞く。

プランニング現場を「覗き見」

──初回放送では、3人のかけあいや議論がすごくおもしろかったです。番組に出演されていかがでしたか?
井上 ブレストをそのまま配信するなんて、今までにない新鮮な番組形式ですよね。
広告業界をめざす人にとって、企画のコツを学べるコンテンツはたくさんありますが、プランニングの現場を直接見ることは難しい。
広告業界に勤める人でも、他社のブレストを見たり、自分は参加せず議論全体を俯瞰して聴いたりする機会はめったにありません。どんなリスナーにとっても、学びが多い番組だと感じました。
それにこの番組では、普段可視化されづらいクリエイターの技能が、コンテンツになって楽しめる。出演するクリエイターにとっては、自分のクリエイティブ力を発揮できる場として、「やってやろう!」と気合が入る仕事になるのではと思います。
今回の収録では中村さんも村田さんもすごく気持ちが乗っていた印象です。リスナーと演者、それぞれの視点で魅力がある番組だと思いました。

クライアントの目の前で「ブレスト」

──銚子電鉄さんに関するブレストはどうでしたか?
井上 たくさんのアイデアが出たため、様々な方向性を比較検討できて、質の高い議論になったと思います。
それに、目の前にクライアントの代表者がいて、率直に意見を交わし、最終的にその場でジャッジされるという異例の形式だったので、真剣勝負な感じですごくおもしろかったです。
──またこの番組にご出演されるとしたら、どんな企業の課題について議論してみたいですか?
井上 「お金がない企業」の認知獲得課題はおもしろそうですよね。
「予算は制限されているけど認知を獲得したい」といった課題を、クリエイターのアイデアや知恵、プランニングの妙を使ってどう解決していくか。
リスナーにとって実践的な要素が強くなり、共感をもって聞いてもらえそうです。プランナーとしても予算の大きな案件とは全く違う難しさがあり、やりがいのある課題だと思います。
収録風景ではクリエイターたちの「ガチブレスト」が繰り広げられた。

マーケターが見る、デジタル音声広告の「強み」

──井上さんは、マーケターとして音声広告にどんな印象をお持ちですか?
井上 2つ、大きな強みがあると思っています。
1つは、「音は心を動かしやすい」ということ。広告の大きな目的の一つに、記憶を書き換えることがあります。「商品を知らない」人の記憶を「好意を持って、商品を覚えた」状態まで書き換える。そのためには、ユーザーの感情を揺さぶらなければなりません。
たとえば日常の風景を切り取った映像のなかで重苦しい音楽が流れたら、「これから何か事件が起こるのかも」と恐怖を覚えるでしょうし、優しくゆったりとした音楽が流れていたら「日常の風景っていいな」と感動するかもしれませんよね。それくらい、音は人の感情を左右するうえで重要な要素なんです。
2つめに、広告へのアテンションにおいても強みがあります。
音声広告では多くの場合、イヤホンなどで音を聞いている人にアプローチします。いわば、彼らは「音を待っている」。つまり音に対するアテンションが高い状態ですよね。
さらに、そのアテンションの占有率もポイントです。
たとえば、どんなに大きな看板を作ったとしても、人の視覚の100%を占めることはできません。一方、音声広告は広告が流れている間、その人の聴覚を独占することができます。
アテンションが高い状態の人に対して、独占的に情報を届けられる音声広告は、非常に訴求効果が高い施策だと考えています。
──Spotifyでの音声広告についてはいかがでしょうか?
井上 Spotifyの音声広告に限定して考えると、さらに優位性があると思います。
それは「Call to Action(行動喚起)」が効果を発揮しやすいこと。たとえば、広告を聞いて「この商品いいな」と思ったら、聞いている音楽はそのままバックグラウンドで再生しながら、リンクをクリックして詳細を見ることができますよね。
動画広告でもユーザーの行動を喚起することを得意とした広告はあって、広告上にテキストやCall to Actionボタンをオーバーレイ表示させたりすることができます。
ですが、そうしたフォーマットでは視聴者はあくまで見たい動画があってページを開いているので、広告はスキップされてしまいがちです。スキップできない仕様の広告を出稿したり、内容で視聴者の心を動かせたりしても、見たかった動画の視聴を優先しますから、その間に広告は忘れられてしまいがちです。
一方で、Spotifyの音声広告なら、ユーザーの「音楽を聴きたい」という欲求や体験を阻害せずに、Call to Actionにつなげられます。
人の心を動かしやすい音での訴求であり、聴覚を独占できて印象に残りやすい。Call to Actionが効果を発揮しやすい仕様であり、かつユーザーの体験をそこまで阻害せずに広告の詳細を伝えられる。この4点において、Spotifyの音声広告は非常に可能性のある媒体だと感じます。
これからもっと多様な媒体で、様々なスタイルの音声広告が実践されていくだろうと思っています。音声広告は、いわば「広告の未来形」とも言えるのではないでしょうか。今後の展開が楽しみです。
次回以降の放送では「ゲーム実況者のように、クリエイターから湧き出てくるアイデアなどを解説する人が出てくるとおもしろいのでは」とコメントを残した井上氏。近著『マーケターのように生きろ─「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動─』(東洋経済新報社)では「生きる知恵としてのマーケティング」について綴っている。
The Planning第1回目の放送は、こちら。