2021/5/20

【鳥貴族 社長】従来の焼鳥屋と差別化して、新しい市場を開拓

株式会社鳥貴族 代表取締役
新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けているのが、飲食業界。中でも、酒類を提供する居酒屋のダメージは大きい。

業界に新風を吹き込み、1985年の1号店スタートから今や600店以上にまで店舗を拡大してきた鳥貴族も例外ではない。しかし、創業者の大倉忠司社長は、「ピンチをチャンスに変えてきたのが、鳥貴族の35年の歩みだった。このピンチをチャンスに変える」と意気込む。

顧客や従業員からの高いロイヤリティでも知られる鳥貴族。その強さは、どこにあるのか。(全7回)
大倉忠司(おおくら・ただし)/鳥貴族ホールディングス 社長
1960年、大阪府生まれ。調理師学校卒業後、大手ホテル、焼鳥店勤務を経て、1985年に独立し、鳥貴族1号店を出店。1986年、イターナルサービスを設立してチェーン展開を開始。低価格メニューを武器に急成長。2005年に東京進出。2009年、社名を鳥貴族に改める。2021年4月現在、全国で623店舗を展開。アイドルグループ「関ジャニ∞」メンバーの大倉忠義さんの父としても有名。

焼鳥業界で「中内功の価格破壊」

新しく焼鳥屋を作った人からの「大チェーンを作ろう」という大きな夢に惹かれて、焼鳥業界に入ったのが、私でした。
当時22歳。その人に一生ついていこうと思っていました。その人を大きくすることが、私が大きくなることにもつながると思っていました。
実際、着実に店は増えていったのですが、そんな中で私にもいろいろな考えが出るようになりました。
そこで「社長、こんなことをしませんか」「こうやりませんか」と提案するのですが、なかなか受け入れてもらえない。じゃあ、と半分くらい受け入れてくれることもありました。
ただ、次第にビジネスに対する考え方やお客さまに対する考え方が、そもそも違うのではないか、ということに気づいていきました。
社長のナンバー2として、自分で自覚を持っていましたから、経営の勉強をしようとたくさん本を読んでいました。このとき、最も共鳴したのが、ダイエーの創業者、中内功さんの考え方でした。
価格破壊を起こす、価格の決定権をメーカーから奪ってお客さまに渡す、もっと喜んでもらえるお店を作る……。これを焼鳥業界でやれたら、というのが、私の考え方になっていきました。

社長とぶつかって独立を決断

大チェーンを作るには、今の焼鳥店よりも低価格にしないといけない。この考え方は、社長とも一致していました。
実際に低価格にしようとしていたのですが、同時に出てきた言葉に私はショックを受けることになります。コストを下げるために冷凍の鳥を使う、と言われたのです。
それは違うと私は思いました。品質はそのままで価格を下げてこそ、お客さまに喜んでいただけるのに、品質を下げて価格を下げるのであれば、意味がない。
ここでぶつかりましたが、相手は社長ですから、最後は承認するしかない。
ただ、さすがにこれはないと思ったのは、炭酸を作る機械を導入したことでコストが下がったときのことでした。
浮いた部分をぜひお客さまに何か還元しましょう、という私の提案にこう返されたのです。