2021/4/6

【解説】世界の「ワクチン格差」解消のカギを握る新特許とは

INDEX
  • ワクチンを囲い込む富裕国
  • スルーされた「WHOの呼びかけ」
  • 現状打破のカギは「5年前の発明」
  • 前途多難な「民衆のワクチン」
  • バイデン政権の「決断」に注目

ワクチンを囲い込む富裕国

新型コロナウイルス感染症のワクチンのうち、少なくとも主要5種類の開発の中核となった遺伝子工学技術について、先ごろ特許が承認された。それは5年前に発見された技術であり、特許は米政府に与えられる。
この特許権があれば、米政府はワクチンを生産する製薬企業に対し影響力を行使し、途上国への供給を拡大せよと圧力をかけることができる。
問題は、米政府がそのような行動に出るかどうかだ。
米国やEU、英国が巨額の公的資金を投入し、記録的な速さで開発された新型コロナのワクチンは、このパンデミックにおける偉大な勝利を象徴している。各国政府は製薬企業と手を組み、原料の調達から治験の資金援助、生産工場の改良まで、何十億ドルもつぎ込んだ。さらに数十億ドルが、完成したワクチンの購入に使われる。
しかし、この欧米の成功が、いま大きな格差を生んでいる。
これまでに世界で供給されたワクチン約4億回分の90%は、富裕国と中所得国が独占している。このままいけば、それ以外の国に住む人々がワクチンを接種できるのは何年も先になると予想される。
南アフリカのヨハネスブルクで、「ワクチン接種機会の平等」を訴える活動家(Joao Silva/The New York Times)