2021/4/2

【新】音楽ビジネスの歴史に学ぶ、危機の時代の乗り越え方

個人 音楽コンサルタント、作家
INDEX
  • これからは「サブスク+α」が必要
  • 日本は音楽ビジネスの「主役」だった
  • ジョブズが恐れた「着うた」文化
  • 日米の「切磋琢磨」が進化を生んだ
  • 「志」なくしてクリエイティブなし
幾度となく「音楽離れ」がささやかれる中でも、近年は「サブスク型配信」と「ライブ」の両足で堅調をキープしてきた音楽業界。しかし、コロナ禍でライブという片足が機能しなくなった現在、その行く先には悲観的なムードが漂っている。
それでも、音楽には「希望の未来」がある──そう断言するのは、音楽産業を専門とするコンサルタントとして活躍する榎本幹朗氏だ。
榎本幹朗
1974年、東京都出身。作家・音楽産業を専門とするコンサルタント。上智大学に在学中から仕事を始め、草創期のライヴ・ストリーミング番組のディレクターとなる。ぴあに転職後、音楽配信の専門家として独立。2017年まで京都精華大学講師。 寄稿先はWIRED、文藝春秋、週刊ダイヤモンド、プレジデントなど。
音楽ビジネスはこの100年間で3度も大きな「危機」を経験している。だが、そのたびにイノベーターたちの創意工夫で危機を乗り越え、新たな「黄金期」を創出してきた。
歴史は繰り返す。たとえば1930年代のアメリカでは、フリーメディアであるラジオの普及によって、レコードの売り上げが25分の1に落ちた。しかし、この状況を逆手に取り、ラジオで楽曲を大量に紹介して、その宣伝効果で安価なシングルを大量に売ることで、1950年代までに音楽業界は復活を遂げた。
この状況は、新たなフリーメディアであるインターネットの登場によって、音楽業界が再び大打撃を受けた2000年代と酷似している。このときも、音楽業界は宣伝を無料メディア(動画SNS)に頼り、楽曲を安価で販売(iTunes)することによって危機を脱した。
お先真っ暗に見える状況でも、必ずその先に道はある。それが、歴史が教えてくれることだ。
そんな音楽業界の100年史をひもといた、榎本氏の新刊『音楽が未来を連れてくる』(DU BOOKS)が、大きな反響を呼んでいる。
古今のイノベーターたちの志と挑戦を、656ページの壮大なサーガとしてまとめ上げた同書は、音楽ビジネスに携わる人に限らず、新しいことに挑戦したいと考えている人すべてに大きな勇気と示唆を与えてくれるだろう。
今週の「ザ・プロフェット」では、同書が伝える「音楽産業の底力」と、その「未来像」に迫っていきたい。

これからは「サブスク+α」が必要