2021/3/23

【DXの盲点】企業の潜在能力を解き放つ、“つなぐ”システムの可能性

NewsPicks BrandDesign Senior Editor
デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性がますます声高に叫ばれている。業務のデジタル化が進む一方で、多数のツールが登場し社内システムがサイロ化、非効率な作業が新たに生じるなど企業は今、混乱の最中にある。

そんな複雑化する企業内システムの課題を解決するソリューションとして注目されているのが、直感的なデジタルワークフローで優れたユーザー体験を実現する「ServiceNow」だ。システムを「つなぐ」ことで、どんな価値が生まれるのか?

ServiceNowの日本普及に向け旗を掲げるエヌ・ティ・ティ・データ先端技術株式会社(以下NTTデータ先端技術)の平岡正寿氏に、つなぐ技術の価値とその発展の可能性を聞いた。

2つの「DX」から考える

──「日本のDXはなかなか進まない」と度々言われます。長年にわたり企業のシステム構築を最前線で支援してきた平岡さんは、日本企業のDXの実態をどう見ていますか。
平岡 「DXがなぜ進まないのか」という問いは難題ですが、そもそもDXは本当に進んでいないのかを考える必要があると思います。
1992年にSIerに入社。その後、2004年にNTTデータに入社し、システム構築のプロジェクトを上流工程やアーキテクチャ設計の側面から支援する活動を行う。2015年にAgileの部隊を立ちあげ、ビジネス価値をシステムによっていかに早く創出できるかを意識した活動を推進。2020年、NTTデータ先端技術に転職。同様の価値意識をもって、現事業部にてAgileを推進。同時に価値創出を加速することを狙い、パートナーとのアライアンスを推進している。
 まず、DXにはいくつかの段階があります。
 一つは「デジタライゼーション」。これまでの業務をデジタルに置き換えることですね。“守りのDX”ともいわれ、コロナ禍で急速に拡がったテレワークなどがわかりやすい例です。
 もう一つは「デジタルトランスフォーメーション」。業務を根本から変えてまったく違う価値を生み出す、“攻めのDX”です。
 例えばUberはその典型で、タクシーに乗るという行為がデジタルによって新しい体験に変わりました。
参考:NTTデータ経営研究所「日本企業のデジタル化への取り組みに関するアンケート調査」結果速報
 派手で目立つのは“攻めのDX”ですが、これは企業にとっては大きなチャレンジです。
 生み出す価値はもちろん大きいのですが、一つの企業単位で考えたときに、そう頻繁に起こせるものではありません。

露呈した「DX戦略」の差

──逆にいうと、“守りのDX”である業務のデジタル化については、自社内でどんどん進められる領域ということですね。
 企業が「経営として、DX戦略をどれだけ真剣に考えているか」が、“守りのDX”を推進できるかどうかの分かれ目になります。
 過去10年を見ると、経営トップがDXの重要性をきちんと理解して進めてきた企業と、そうでない企業では大きく差が開きました。
 出遅れてしまった企業も、急いでDXに取り組まなければいけないと理解しつつ、DXそれ自体はコンセプトのようなものなので、具体的に何をするかは自らが考え出さないといけない。
 しかも、ITはコストもかかるので二の足を踏んでしまう。よくわからないけど、とりあえず何かやってみようと動き出すケースもありますが、それでは現実的に結果を出せません。
 我々、NTTデータ先端技術は顧客企業のシステム構築を担うNTTデータグループにおいて、その名の通り、主に技術的な部分を受け持つ会社です。
 技術そのものを生み出すというより、優れた技術をつくる企業とタッグを組み、その技術を使ってビジネスをつくり出すことが我々のミッション。
 そのため、どこと提携して、そこからどんな価値を生み出せるかが非常に重要です。
 これまでは全社でパートナーを定めるようなアプローチは採ってこなかったのですが、日本企業のデジタル変革が待ったなしの今、全社共通で取り組むパートナーアライアンスを強化し、より高いレベルの価値を生み出していこうとしています。

価値ある技術を早く届けるパートナー戦略

──NTTデータ先端技術が提携する技術パートナーの1社が「ServiceNow」です。2018年には米ビジネス誌『Forbes』が選出する“世界で最も革新的な企業”ランキングで、並み居る有名企業を押さえ1位に。今、注目の同社と提携することになった経緯を教えていただけますか。
 NTTデータ先端技術では、現在、マイクロソフトとServiceNowの2社を全社共通で取り組む技術パートナーとしています。
 ServiceNowはここ数年で知名度が上がってきた新しい企業ですが、弊社の代表である木谷強が以前から「ServiceNowは次に絶対来る」と注目していたことも、今回の提携が実現した理由の一つです。
 マイクロソフトのような業界の雄と組むことも大切ですが、世の中に先駆けて“次に来る”技術パートナーを見つけることも、我々にとっては重要な戦略になります。
 最先端の価値ある技術を、いかに早くお客様に提供できるか。
 競合などの動きから何かしらDXへのアクションが必要だと理解しており、これから具体的な取り組みを始める企業にとっても、ServiceNowを活用したシステム構築は有効な施策の一つとなると思います。

ワークフロー最適化に宿る価値

──ServiceNowでは、具体的に何ができるのでしょうか。
 ServiceNowは、社内システムや従業員向けの社内サービス、顧客向けサービスのワークフローを構築するクラウド型プラットフォームサービスです。
 簡単にいうと、データのプラットフォームと、それを司るソリューションという二段構えになっています。
 ServiceNowというプラットフォーム上にさまざまなデータが流れ、各事業部が活用する業務システムとデータを一元管理。従業員や顧客といった「人」に対して、必要なサービスを提供する“プロセス(=ワークフロー)”を構築する仕組みです。
 誤解を恐れずにたとえると、レゴのように土台となるパーツを敷いて、その上にパーツを組み立てたり、オリジナルのパーツを自由につくったりしていくものだと思ってください。
 今、企業内DXを考えると、部門ごとにさまざまなツールが乱立し運用がサイロ化/煩雑化している問題があります。
 ServiceNowという共通のプラットフォームを使うことで、さまざまなデータやサービスがつながり、それを管理・運用する煩雑さが解消されます。面倒な業務を完全自動化できるのです。
 例えば、経費精算や社内研修受講管理、人事管理などのHR、事業本部のITワークフロー、顧客対応の分野などではフォーマット化したサービスが用意されています。
 UIが優れていて快適なユーザー体験を提供できる点も、ServiceNowの素晴らしいポイントです。

煩雑で面倒な業務は完全自動化

──ServiceNowを使ったソリューションとして、現在、NTTデータ先端技術が提供するのは具体的にどんなものですか。
 弊社が提供する「Hinemos(ヒネモス)」という運用管理ツールとの連携があります。
 Hinemosはそれ単体でも非常に強力なツールですが、ServiceNowと組み合わせることでお互いの機能を補完し、システム運用を非常に効率化できます。
 システムの運用監視は世界中に何千台もあるサーバーの状態や、それぞれをつなぐゲートウェイが正常に稼働しているかをチェックするという、非常に大変な作業です。
 そこでもし不具合が発生した際には、ServiceNowが適切な場所に次々とアラートを出すことで、人が作業することなく対応ができます。
 サーバーは正常に動いて当然と考えられているので、トラブルが起きると対応も大変ですし、ものすごく怒られる。このようにシステム運用監視は損な仕事なんです。そういった業務をなるべく自動化し機械任せにすることで、働く人のストレスもなくなるし、業務も効率化します。
 ほかにも人事の研修受講管理なども、わかりやすい例です。
「研修、ちゃんと受けましたか?」「合格点は取れましたか?」と、人事は確認が必要ですが、管理する側もされる側も面倒が多く、ストレスを感じているはずです。
 ServiceNowを使えば、いつ・誰に・どんな研修を受けさせるか。実際にどれだけ受講していて、結果がどうなのか。そういったことをすべて一元管理、自動化できます。
 受講対象者である社員にも自動的にメール通知を送ることで、人が具体的なアクションを起こす必要がなくなるのです。

「+α」の価値をいかに生み出すか

──ServiceNowの導入にあたって、NTTデータ先端技術はどんな役割を果たすのですか。
 これまでお話ししてきたように、業務には自動化すると絶対的に楽になるものが膨大に存在します。
 その上で、ServiceNowを全社的に導入し、事業部ごとにその仕組みを最適化して活用することが企業内DXを効率的に進める一つの方策となります。
 その際に重要なポイントは、ServiceNowを活用して、どの業務をどうデジタル化し、どういう成果を生み出すか、ひいてはいかに企業価値を高めるかを設計することです。
 ServiceNowは一部分で導入するよりも、全社で「どういうものと組み合わせて、どうつくり、どう使うか」で大きなインパクトを生むソリューション。
 企業ごとにDXで達成したい目標は違うので、それぞれの目標に合わせて最適化したコンサルティングをすることが、我々の力の発揮のしどころであり、やりがいでもあります。
──技術者集団でもあるNTTデータ先端技術にとって、コンサル的な能力を持つ人材のニーズが高まっているということですか。
 現在、約900人の社員のうち、約9割はエンジニアであり、その多くがお客様へのコンサルティングを行っています。
 もちろん、正しく動くシステムをつくることは大前提であり、非常に重要ですが、それだけでなく最適なシステムを考えて提案できる人材の育成・採用を今後積極的に進めていくつもりです。
 特にServiceNowを検討する企業は、これからDXを本格的に進めるフェーズにいることが多い。それぞれの目標に合わせて、ServiceNowをうまく使い、つなぎ、価値を創出することが要求されます。
 難易度が高い仕事ですが、その大変さのギャップを埋めて、技術で支えるシステムを考えられる人にぜひ仲間になってほしいですね。
 一方で、実際にシステムをつくるエンジニアも「言われた通りにつくる」だけではなく、技術者視点でどんどん提案することが必須になります。
 システムを考える側、つくる側が活発に意見交換することで、さらに価値の高いものを生み出す環境を大事にしています。
 最終的な我々の強みは、「最先端の技術を活用し、いかにビジネス価値の高いものを構築するか」。
 ServiceNowに関しても、ServiceNowに詳しいだけでなく「ServiceNow + 何か」を提案できることに価値がある。
 しかしながら、日本には当社を含めてまだまだServiceNowの資格を保有する技術者は非常に少ないので、基本的なITスキルを持った方々を育て、ITサービスマネジメントを支える人材を創出することが求められています。
 ほかの技術も含めた総合的な提案と実装、その両方ができるところに我々の存在意義があると思っています。
 だからこそNTTデータ先端技術では覚悟を持って、3年間で数百名規模の育成を推し進めていきます。
──ServiceNowのような「つなぐ」技術は、業務を効率化し、人がより本質的な業務に取り組むための価値を持つと感じます。ビジネスにおけるインパクトが大きい一方で、つなぐことの価値は、まだまだ見落とされがちな印象です。
 企業は新しいサービスを生み出すだけではなく、既存のサービスを隣のサービスとつないだり、別の何かと連携したりすることで成長します。新規事業に関しても、既存サービスとの連携から創出されるケースがほとんど。
「つなぐ」ことは、ビジネスを拡大させる大きな仕事なんですよね。やってみると、ここは本当に楽しいですよ。
 当然、これまでの仕組みをつなげるための「何か」が必要ですし、「どうつなぐか」に価値が宿る。
 我々は先端技術の名に恥じぬよう、技術に特化し技術を究めてきました。
 でも単に、“技術オタク”になるのではなく、ユーザー視点を持って技術を究めることが大事だと思っているんです。
 NTTデータ先端技術の役目は、技術的な視点で「つなぐ」をお客様と一緒に考えること。
 技術によってつながり変わっていく世界に、日々わくわくした気持ちで向き合っています。