2021/3/6

【withコロナ】助成金ではなく「懸賞金」を拡大せよ

ワクチン開発から医療機器開発まで、パンデミックとその長期的被害を克服するためには「イノベーション」が欠かせない。そのために必要なのは助成金でも特許でもなく、「懸賞金」だ――。ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグが絶賛する科学経済啓蒙家、マット・リドレーはそう断言する。

米英でベストセラーとなっているリドレーの最新著書『人類とイノベーション』からお届けする。

イノベーションを生むのは「自由」だ

いうまでもなく、今回のパンデミックが終わったときには、ひどい経済的損失を修復しなくてはならない。
深刻な不況は避けられない。失業率は跳ね上がり、インフレは急激に進み、多くの人の債務が持続不可能になり、保護貿易主義が広がる。こうしたショックはまちがいなく貧困層に最大の打撃を与え、大勢の生活を破滅させる。
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そして、世界が本書『人類とイノベーション』の最も大事な教訓を学ばなくてはならないのは、まさにここだ。
繁栄はイノベーションから生まれ、イノベーションは新しいことを実験して試す自由から生まれ、自由は、規制が寛容で、励みになって、判定が早く、良識があるかどうかにかかっている。
経済成長を取りもどし、最貧困層を助けるための絶対確実な方法は、パンデミック中に医療機器や治療法のイノベーターを促すために一時的に押しのけられた、規制による先延ばしとハードルを研究したうえで、そのような改革を恒久的なものにして、経済のほかの要素にも適用できるかどうか確認することだ。
【提言】法規制を減らすために今考えなければならないこと
私はこの危機のあいだ何度も、お役所仕事による先延ばしにいら立つ起業家や科学者と話をした。
たとえば、政府が診断検査を購入する契約をまとめるのに10日かかる。とくに公的部門の管理者、コンサルタント、法律関係の交渉者に見られる切迫感のなさは、もちろん危機においては問題だが、最初からずっと問題だったはずだ。
(写真:fermate/iStock)
新しい医療機器の認可にせよ、新しい滑走路の建設にせよ、意思決定のプロセスは麻痺していると言えるくらい無気力になっており、選挙で選ばれたわけでもない大勢の「相談員」に悠長な対応の報酬を与えるための要件で、がちがちに固められている。
イノベーションを市場導入しようと努力しながら、資金がどんどん減っていくのを見守る起業家にとっての問題は、規制機関が否認することではなく、承認するのに長い時間をかけることなのだ。
コロナ後に繁栄を取りもどすつもりなら、それを変えなくてはならない。
政治家はさらに踏み込んで、人間が努力すべききわめて重要な分野で、イノベーションが少なすぎるという事態に陥ることが2度とないように、イノベーションを促すインセンティブをもっと総合的に考え直す必要がある。

助成金ではなく「懸賞金」を導入せよ