2021/2/21

【お金事情】なぜ、東京五輪は中止にならないのか?

SportsPicks/NewsPicksSports
 商業主義のイメージもあいまって、オリンピックにネガティブなイメージを持つ向きは多い。
 そこにコロナ禍、大会組織委員会の不祥事である。「中止論」が高まるのも無理はない。
 「【核心】医療体制から見る五輪の現実味」では、データと医療体制の側面から開催の可能性について考察した。
 第二弾の今回は、多くのメディアが指摘する東京オリンピック・パラリンピック(以下・東京2020大会)にまつわる「お金事情」からその行く末をシミュレーションする。
「なぜ中止されないのか」「開催するためには何が今、必要なのか」──その「判断基準」が見えてくる。

東京五輪の残された3つの道

 東京2020大会が話題にのぼるとき、決まって指摘されるのが「お金事情」である。
 莫大な収入をもくろむIOCが中止を拒んでいる。日本側が中止を申し出れば違約金が発生する。あるときは組織委員会は報酬が目当てで中止にしない、とまで言われたこともあった。
 では実際にオリンピックの収益はどのように生まれ、どのように使われているのか。東京2020大会はいかにして運営されているのだろうか。
 中止、無観客での開催、有観客での開催。
 現在、東京2020大会に残された道はこの三つだろう。
 各種世論調査を見ると「再延期すべき」は、もっとも支持を集めるが、その現実味は薄い。来年には北京での冬季五輪が控えており、24年、28年もパリ、ロサンゼルスとすでに開催都市が決定している。一部には「32年の開催を」との声もあるが、もはやそれは延期とは言えない(すでにインドが立候補しており有力とも言われている)。
 加えて、中止や延期の決定権を持つ「唯一の組織」IOC(国際オリンピック委員会)も、会長のバッハ氏をはじめ複数の幹部たちが繰り返し「2021年7月に開催されなければ再延期はない」と断言している(その他のことについてはいつも可能性を含ませる物言いであるにもかかわらずだ)。
 では、現実的に想定される三つの道はどのような結果をもたらすのか。「お金事情」から予測してみる。
 オリンピック関連の収支は複雑で、非公開のものも多くあるが、IOCが発表する「OLYMPIC MARKETING FACT FILE2020」「IOC Annual Report 2019」、そのほか公表された契約書、大会組織委員会が発表するV5予算、そして東京都の公式資料などを総合すると、おおよそ以下の表のようになる。