新型コロナが加速させた、日本の「内向き」カルチャー
米国ではハリウッドの大作が映画館で上映されずストリーミング・シフト。ゆえに日本の映画館も、枠の穴埋め的に国内コンテンツが占めて久しくなっているのです。
日本の映画産業とカルチャーの多様性はどうなるか。特集『時間を忘れる「コンテンツ」の研究』続編として、映画ジャーナリスト・宇野維正さんの論考をお届けします。
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映画好きの私ですが、TOP10のうち1位と10位の二作しか観ていません。
理由は個人の好みではないからなのですが、世間の評価からもズレている部分もあるなと思いました。
というのは、
映画レビュー投稿SNSを利用していますが、このTOP10作品はレビュー評価の高さと一致しない作品が複数混じっています。
過去対比していないので傾向はわかりませんが、コロナ禍で上映作品が減り、レビュー評価が高くない作品でも注目されやすく観客動員できたと仮説します。
「ランキングの上位が邦画ばかり」という国は、世界でも稀でしょう。中国やインドを除けば、どの国もランキングの上位はハリウッドでつくった映画ばかりです。
日本では上位が邦画ばかりである、しかも「若者の洋画離れ」がいわれている、というのは、日本の映画館で上映される映画がハリウッド映画ばかりにはならない、ということでしょう。
世界の歴史には、自分たちの文化を失くし、言語を失くし、消えていった民族がたくさんあります。というより、大多数の民族はそうやって消えていきました。今でも、自分たちの言語で映画やドラマをつくったりすることはない、若者は自分たちの祖父母が話していた言語をもはや学ばない、その民族の言語は消えていくだろう、という民族は何百といます。
「ガラパゴス化」がそんなに悪いことなのか、たぶん経済的なグローバル展開を考えると、よくないことなのでしょう。学術も、世界を広く意識し続けなければ、高い水準の仕事はできません。要は、自分たちの文化を身につけながら、世界各地の文化も広く理解する、というのが一番いいですが、なかなかできることではありません。
それにしても「世界」というのはハリウッドだけであるはずがなく、ハリウッド一色になるくらいなら、邦画一色のほうがましだ、とも感情的には思いもします。昔は自分の国の文化だけでよかったのです。50年前でも、邦画中心で、たまに洋画を観て学ぶところがあればよかったのです。グローバル化というのは本当にやっかいです。邦画も、ロシア、中国、インド、ヨーロッパ、中東、アフリカ、北米、南米の映画も広く上映されている、というのが理想ですが、世界のどの国もそうはならないでしょう。
映画ランキングがアニメ作品ばかりで占められている現状の解説。
「今目の前に広がっているのは、アニメ作品やその主題歌を中心とする国内コンテンツが猛威をふるい、海外コンテンツといえばほぼ韓国のコンテンツに占められた、本当は選択肢がたくさんあるのに多くの人が自分から選ぼうとはしない、さらに奇妙な日本のカルチャーを取り巻く環境だ」
海外といえば韓国だけ、という類似の現象は若い人のファッション嗜好にも見られる。新大久保(韓国ファッション)。日本人によるD2C。国内で売っている古着。ヨーロッパブランドの名はかなりのファッションオタクかプロにしか通じないことが増えてきた。
映画ビジネスのデジタル・トランスフォーメーションは、コロナによって完全に変化が後押しされた。コンテンツ自身のエンターテインメントと、映画館という体験は別物だ。前者だけならネットフリックスで事足りる。後者は体験価値の構造改革が避けられない。
日本のコンテンツや産業がガラパゴスなのは今に始まったことじゃない。長い歴史をかけて、日本は世界とは切り離された文化の成熟や消費行動に至っているのだ。だから無駄に欧米との比較で幻想を追いかけるのではなく、独自の価値をいかに世界に売るかを考えるべきだ。
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