(ブルームバーグ): 米アップルなどを顧客に持つ半導体設計の英ダイアログ・セミコンダクターは7日、ルネサスエレクトロニクスへの約49億ユーロ(約6220億円)での身売りに向け協議が進んだ段階にあると明らかにした。

ダイアログの発表によれば、ルネサスが提示した全額現金による買収額は1株当たり67.50ユーロ。ダイアログの5日終値(56.12ユーロ)を20%上回る。フランクフルト上場のダイアログ株は年初来で約25%上昇。アップルの第5世代(5G)移動通信システム対応端末に対する旺盛な需要や買収観測で押し上げられていた。

ダイアログは「必要に応じて適切な時期にさらなる発表を行う」とした上で、「いかなる企業からも確定的な提案や条件が示されるかについて確実なことは言えない」とも説明した。ブルームバーグ・ニュースは先に、ダイアログの身売りの可能性を巡る交渉について報じていた。

ルネサスも8日、ダイアログの経営陣と、発行済み株式と発行予定株式の全部を1株当たり同67.50ユーロで現金で買い付ける買収提案に関して協議を行っていると発表。企業買収に関する英国の規定に基づき、3月7日午後5時(ロンドン時間)までに確定的な買収の意向の有無について明らかにするとしている。

事情に詳しい複数の関係者は7日、ダイアログはルネサスを含む複数の買い手候補との交渉が進んでおり、アドバイザーと協力していると語っていた。ダイアログはSTマイクロエレクトロニクスと先に協議していたという。

ブルームバーグの集計データによれば、半導体企業が関連する合併・買収(M&A)の総額は昨年2倍余り膨らみ1440億ドルに達した。9月には米エヌビディアが半導体設計の英アームを400億ドルで買収することで合意。ソフトバンクグループと同社のビジョン・ファンドが保有するアームの株式を取得するもので、半導体業界では過去最大規模のM&Aとなる。

各国が半導体など戦略的産業を保護しようとする姿勢を強める中で、いかなる取引も英規制当局による厳しい審査を受けそうだ。エヌビディアによるアーム買収計画については英国の競争市場庁(CMA)が調査に入る。CMAはテクノロジー関連の戦略的な案件については規模にかかわらず、より厳密な審査を行う方針を示していた。

また、ジョンソン英政権は外国勢による対英投資を取り消す権限を閣僚に付与する強力な新法の立案作業を進めている。英国の重要資産を敵対的な外国勢が握ることを阻止するのが狙い。

英政権、外国勢の投資取り消す権限認める法案を計画-関係者

ダイアログとルネサスは10年余りにわたって協力関係にあり、ルネサスもアップルのサプライヤーの1社。

原題:Dialog Semi in $6 Billion Takeover Talks With Renesas (3)(抜粋)

(ルネサスの発表を追加して記事を更新します)

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