コロナ重篤患者に日本で開発の薬投与で死亡率減 英で研究成果
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注目のコメント
これは期待を持たせる結果であると同時に、慎重になるべき結果でもあると思います。
まず前提として、他に同様に行われているトシリズマブでの試験では、死亡率の改善を示すことができていません。
その試験との決定的な違いとして、この試験では偽薬を準備していない点が挙げられます。治療する医師が、トシリズマブを受けているか受けていないかが分かっているので、トシリズマブの有効性を証明したい医師が、より丁寧で熱心な治療を行い、結果を良くしてしまうようなバイアスがかかるリスクを孕んでいます。
また、既存のステロイド薬との併用における効果は定かではありません。ステロイドにも炎症やサイトカインストームを抑える効果があり、役割に重複が見られます。一方、ステロイドと比較して、1人あたりのコストが圧倒的に高くなります。
さらに、まだ大学からのリリースのみで、査読論文の形で研究の詳細が公表されていません。
本当にトシリズマブを追加すべきかについては、まだ慎重であるべきだと考えます。現状のエビデンスでアクテムラを使用したいかと言うとNoかもしれませんね。(循環器でも多くはないものの使用される薬剤です)
昨日も現在のエビデンスを少しだけコメントしました。
https://newspicks.com/news/5522968/
少し話が変わりますが、肺炎の経過判定、つまり良くなってるのか悪くなってるのかの判断には酸素の必要量や呼吸数といったものが用いられます。
胸部単純X線、いわゆるレントゲン、これはだいぶ遅れて改善することも多いのでリアルタイムな観察には不向きです。
熱も気にする方が医療者でも多いですが、重症化すると熱すらも出ないことがあり改善したのか悪化したのかわからないこともあって判断しづらいのが実際です。
現場で最もよく経過判定に用いられている1つが、血液検査の炎症タンパクCRPです(これで経過を見るのはちょっと良くないという側面もありますが)。アクテムラを使うと病状は改善してなくともこの値は確実に低下するので、マスクしてしまうことになり判断に使えなくなります。
炎症を強力に抑える薬ですが、諸刃の刃である側面もあるのです。「副作用」という記載される部分だけでなく。
ファビピラビル(アピガン)もそうですし、ほぼ否定されたシクレソニド(オルベスコ)もそうですが、何かに縋りたいのは医師も同様ですが、冷静に判断していかなければいけないのは医学の歴史がずっと同様に示してくれています。以前から
サイトカインストーム抑制効果が
指摘されていました。
ステロイドや免疫抑制剤でも
似た様な効果はあるのですが、
感染症の急性期反応や
サイトカインストームに関係する
IL-6(インターロイキン6)の働きを
選択的に抑制するということで、
余計な副作用も軽減できます。
商品名アクテムラ(一般名トシリズマブ)
商品名ケブザラ(一般名サリルマブ)
の両薬剤で重症抑制効果があった、
と言うことの様です。
日本でも重症COVID-19感染症への
適応追加承認がされれば
全国で使われる様になるでしょうが、
それまでは適応外利用となるので、
利用する場面は限られるかと思います。
アクテムラでは
1回あたり8mg/kg(体重50kgで400mg)
と言う用量が基本的に使われます。
薬価38014円/200mgですので、
1回あたり76028円。
体重に応じて利用量は増減します。
高いと見るか安いと見るか。
投与により主成分の
モノクローナル抗体に対して
患者さんの身体が抗体を作り
再投与時の効果が無くなる
と言うリスクもあります。
もちろん生命を救えるなら
安いと言えますが、
右肩上がりの医療費への負担は
更に増えますね。
ケブザラは日本国内では
皮下注射製剤しか存在しないので、
使うならばアクテムラ一択です。