2020/12/22

【タイミー小川】「マイクロ化する労働」は、新しい自由か?

NewsPicks 編集長
2020年に最も勢いが止まらなかった一つが、フードデリバリーだろう。
外出自粛が求められる中、大手Uber Eatsの注文金額(日本)は、前年同期比400%(4-6月)という爆発的成長を見せた。
だが、フードデリバリーの拡大が新たな可能性を示したのは、外食の世界だけではない。
アルバイト革命だ。
これまでのように面倒なシフトを組み、未来の時間まで拘束される必要はない。働きたいと思ったときにだけ、スマホアプリを開けば、すぐに働いて稼ぐことができる。
Uberのドライバーや配達員に限らず、実はスキマ時間に働けることそのものが、新しい自由なのでは──?
そんな「新しい価値観」を証明しようというサービスをご存じだろうか。Timee(タイミー)。2018年にローンチした、スキマ時間バイトサービスだ。
創業したのは、小川嶺。弱冠23歳の起業家である。2020年9月に物流施設大手プロロジスやミクシィなどから13.4億円を調達し、累計調達額は実に約36億円に達している。
世界では、いわゆるギグワーカーからの「搾取」が問題視されるなか、彼はどんな思想を持つ人物なのか。こうして労働契約の単位がマイクロ化してゆくことは、ただの搾取か、それとも新たな自由か。
気鋭の起業家が変えようという世界と、経営者という仕事について語り尽くした、1万字インタビューをお届けする。

「派遣くん」の世界を変える

小川 2020年は、フードデリバリーが本当に流行りましたね。
僕たちも、フードデリバリーの新規事業(タイミーデリバリー)を立ち上げたりするくらい、ニーズが拡大する見通しがありました。「ウーバーイーツ」が流行語大賞にもノミネートされるほどの社会現象にもなった。
働く人にしてみれば、いつでもどこでも働けるし、すぐにお金がもらえるメリットがあります。
だからこそ学生ばかりでなく、社会人や主婦の方でもスキマ時間に使える。副業のような時流にも乗ったのだろうなと。
ただ、こうした社会現象は、ポジティブに捉えられるだけではなく、ネガティブな側面もまた、フィーチャーされましたよね。
ウーバーやウーバーイーツが、いわゆる「ギグワーク」の代名詞になった。
(写真:Tomohiro Ohsumi/Getty Images)
世界的に見ると、ユニオン(労働組合)がつくられるなど、「ワーカーから搾取している」というふうに思われがちです。
日本でも同様ですよね。ギグワークはいいけれど、プラットフォーマーだけが儲かって、「働いてくれるなら別に誰でもいい」という分類をされてしまっている。
一連の社会現象によって、そんなブランディングにつながっている危惧が、僕にはあります。その世界観を、僕たちは壊したい。
これまでにも、同じようなことは日本で起きていました。「派遣社員」がそうです。
「人」の名前で呼ばれるよりは、「派遣くん」みたいに扱われてしまう。
実は僕も、派遣社員としてかつて働いていました。しかし本当は、「個」として生きる時代だからこそ、もっとクールな働き方ができるはず。
個のスキルや評価を「可視化」することで、小川くんなら「小川くん、ありがとう」といわれるような、新しい価値観が主流となる時代をつくっていきたい。
ウーバーイーツにも相互評価の仕組み自体はあるのですが、それでも「届けてくれたら、なんでもいいよ」というところがあると思うんです。
そういう側面のほうが主流になってしまうと、「ギグワーカーって、かっこよくないよね」「リスクも大きいよね」となりかねない。
僕たちの「スキマバイト」というサービスは、それらと同じような分野だと捉えられたくない。そんな想いを、実は持っています。

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