[東京 14日 ロイター] - 東京株式市場では、これまで出遅れが目立っていたTOPIXが、2018年10月以来2年2カ月ぶりに1800ポイントを一時回復した。きょうの相場の物色動向は、任天堂やトヨタ自動車といった時価総額の大きい銘柄がリードしたが、これらの大型株に個人投資家の資金が流入していることも上昇の原動力になっているとの声が出ている。

東証が公表している構成銘柄別ウエート(2020年10月末現在)によると、最もウエートが大きいのはトヨタ自動車で3.43%、2位がソニーで2.46%、3位がソフトバンクグループで2.39%。このほか、任天堂の1.58%、NTTの1.30%、三菱UFJフィナンシャル・グループの1.25%がウエート上位で目立つ。これらが上昇すれば、TOPIXの堅調な動きに寄与してくるものの、きょうの相場はソニーを除いていずれも上昇した。

ちなみに、材料の有無にかかわらず日々の株価動向が注目されている銘柄では、ファナックは1.00%でウエートがそこそこ大きいが、ファーストリテイリングは0.43%にすぎない。

一般的にITバブル期以降も個人に人気化高いソフトバンクグループ以外の時価総額上位の銘柄は、動きが鈍重なイメージがあるため、長期保有目的の資金はともかく、短期の値幅取りを狙った個人の資金が誘いにくいと言われる。ところが「物色の軸が定まらない中で、本来は重いと思われる銘柄に資金が集まっている」(野村証券・投資情報部投資情報二課の神谷和男氏)といい、トヨタや任天堂の板状況をみると「先週あたりから最小売買単位の小口ロットが目立ち始め、株価の更新頻度が高いことも合わせて考えると、明らかに個人の買いが株価押し上げ要因になっている」(国内証券)との指摘もある。

個人が大型株にも目を向け出した背景として、東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏は「今週からIPOラッシュが始まり、これらを購入するための換金売りや、節税目的の損益通算の売りが出るマザーズなど新興株の動きがさえず、幕間つなぎ的にテーマ性の高い大型株に目を向けている」と説明する。バブル期にも、当時の新日鉄をはじめ大型株に個人の資金が向かった経緯があり、短期間に資金回転ができるのでれば、自然に資金が流れるわけだ。こうした動きは、内外機関投資家のみならず個人の流入資金も厚みを増す過剰流動性相場ならではの事象との指摘もある。

年内で26社の上場を控えるIPOラッシュは15日から始まるため、大型株に集まる個人の資金が細るほか、内外機関投資家の参加が乏しくなるとみられる。そのため、再び株価全般が調整するリスクがあるものの「環境など相場テーマにマッチしていれば、直近の相場で大型株でも短期の値幅取りができるとわかったため、IPO投資で個人の資金が潤沢になった場合は、きょうのような相場は今後も起きるとみられる。その意味で、トヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の新型発売は材料として大きい」(ネット証券)との声も聞かれた。

SMBC信託銀行・投資調査部長の山口真弘氏は「クリスマス休暇を控えた海外投資家の動きが落ち着いてくる時期なので、今日の上昇相場からは国内の個人投資家による物色意欲の強さがうかがえる」と指摘。年末年始にかけて、個人投資家の買いが活発化すると期待する関係者が増えている。

*ヘッドラインを手直ししました。

(水野文也 編集:青山敦子)