2020/11/27

地球を冷やせ。「ジオエンジニアリング」最前線

The New York Times

太陽光を宇宙に跳ね返す

気候変動の影響がますます壊滅的になり、著名な研究機関や政府機関が、かつてはSFの世界と片付けられていたアイデアに新たな資金と関心を注いでいる──地球を人工的に冷却して、人類が温室効果ガスの排出を削減するための時間を稼ごうというのだ。
これはソーラー・ジオエンジニアリング(気候工学)と呼ばれる気候介入の戦略で、太陽光のエネルギーをより多く宇宙に反射させて、地球の温度を強制的に下げようというもの。火山の噴火によって噴出される火山灰雲の効果を模倣している。
従来このアイデアは、化石燃料を燃やし続けることをよしとする一方で、予想外の副作用に地球をさらす危険もあるとして、冷ややかな目で見られてきた。
しかし、温暖化が進行して、ハリケーンや山火事、洪水といった破滅的な災害が増える中、一部の研究者や政策の専門家は、ジオエンジニアリングを不安がるよりも、理解しようとすべきだと指摘する。気候変動の影響がより悲惨なものになってからでは、手遅れになるかもしれない、と。
「私たちは地球の存亡に関わる脅威に直面していて、あらゆる選択肢を検討する必要があります」と、コロンビア大学ロースクールのサビン気候変動法センター所長で、ジオエンジニアリングの技術と法的意味に関する書籍の編者でもあるマイケル・ジェラードは言う。
「ジオエンジニアリングは、いわば地球のための化学療法です。ほかのすべての方法が効かないとなれば、試してみるしかありません」
ソーラー・ジオエンジニアリングは、火山の噴火によって噴出される火山灰雲の効果を模倣している(Etienne De Malglaive/Getty Images)

生態系が暑さに降伏する日