2020/11/6

【バービーが聞く】ビジネスチャンスはそこにある。女性経営者たちのリアル

奈良岡 崇子
NewsPicks, Inc. Brand Design Senior Editor
 近年、女性の起業希望者の数は増加傾向にあるものの、起業家全体に占める女性の割合は1997年以降、減少傾向にあるという。働き方の選択肢として「起業」は珍しいものではなくなっている一方で、実際にはなかなか至っていない現実がある。
 経営者を目指す女性が、ビジネスを創出・成長させるために必要な知識や人脈、スキル、テクノロジーとは何か。実際に起業し、独自のビジネスを手掛ける若き女性経営者たちのリアルな声からヒントを探る。
 昨今、女性をエンパワーメントするアイコンとなりつつある芸人のバービー氏をモデレーターに、生理用品ブランド「Nagi」の石井リナ氏、カラダ作りの食事事業「Muscle Deli」の西川真梨子氏に語っていただいた。

起業に至ったきっかけ、そして起業してからの変化

バービー お二人はどういったきっかけで起業されたのでしょうか?
石井 私はもともと女性をエンパワーメントするメディアをやっていまして、今年の5月には新たに「Nagi」という生理用品のブランドも立ち上げました。生理期間中に1枚でも使用できる吸水ショーツを作っています。
バービー すごく売れているんですよね。
石井 おかげさまで、完売が続いている状態で……。日本は欧米と違って、生理用品の種類もブランドも少ない。だからこのジャンルはもっとアップデートできるんじゃないか、と思っています。
バービー メディア運営をする中で、生理に注目したのはどんな理由からですか?
1984年、北海道生まれ。FRaU WEBにてエッセイの執筆、TBS「ひるおび」コメンテーター、TBSラジオ「週末ノオト」パーソナリティ、ピーチ・ジョンコラボ下着のプロデュースなど幅広く活躍。女性芸人の立場から、ジェンダー問題について考察した発言や記事が共感を呼んでいる。YouTube「バービーちゃんねる」は、再生回数270万回超の回もあり、好評配信中。11/6に新刊『本音の置き場所』(講談社)が発売。Instagramはこちら
石井 もともとメディアのほうでは、日本のジェンダーギャップがかなり深刻であるという問題意識から、社会問題からセックスまで取り上げてきました。
 ジェンダーのギャップがあるのに女性たち自身もそれに気づいていない。その現状を知ってもらったり、選択肢を提示したり。
 もちろん、取り上げるテーマの中には生理の話もありました。メディアとして情報発信するだけではなく、物理的なプロダクトで女性たちをサポートしていきたいという思いが強くなっていって……。
バービー ジェンダーを取り扱うメディアの世界に飛び込もうと思っていたのは昔から?
石井 いえ、起業する前にはIT系の広告代理店にいました。デジタルマーケティングやSNSマーケティングを担当する部署にいて、海外のメディアや企業やインフルエンサーがどう情報発信するのかを追っていたんです。
 2016、2017年頃に、ダイバーシティとかフェミニズム、#MeTooが話題になったときに、日本のジェンダーギャップ指数のあまりの低さにショックを受けて。
新卒でオプトへ入社し、Web広告のコンサルタントを経て、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。16年、初のInstagramマーケティング書籍『できる100の新法則Instagramマーケティング』を共同執筆。2018年3月、株式会社BLASTを設立。現在は、生理用品ブランド「Nagi」およびエンパワーメントメディア『BLAST』の運営を行う。Forbes「30 UNDER 30 JAPAN 2019」インフルエンサー部門を受賞。Instagramはこちら
 ずっと日本で生まれ育って、当たり前に先進国だと思っていたのに、ジェンダーという側面から見ると下から数えたほうが早い。そこに問題意識を感じて今に至ります。
バービー 西川さんは、どういったきっかけで起業を?
西川 私は、前職ではコンサル系の会社で働いていたのですが、30歳手前になって、アンチエイジングを意識してジムに通い始めたんですね。
 運動だけすればいいと思っていたら、トレーナーさんに「食事を変えなさい」と再三言われて。教わる通りに食事を変えていくと、サラダチキンしか食べられない生活になっちゃったんですよ。
バービー うんうん。わかります。こう見えて私、ダイエットするんですよ(笑)。
西川 もともと私、食べることが大好きだったので、おいしい食事も綺麗になることもどちらも諦められなかったんです。だから、栄養が計算されていて、カラダ作りしている人もおいしく食べられる食事を自分で作ることにしました。
 それが今やっている「Muscle Deli」です。
関西学院大学卒業後、繊維メーカーで新商品開発や営業を行う。2013年にサバイバルフィールドを運営する株式会社ASOBIBAを創業。その後、コンサルティング会社で大手企業の新規事業立ち上げを支援。自身がジムに通い始めたときに困った経験から、2016年に株式会社Muscle Deliを創業。ダイエットやボディメイクに最適な食事の冷凍宅配サービスを手掛ける。今年5月、フランチャイズ契約店を募集。コロナ禍の飲食店支援と同時に、リアル店舗への進出を果たす。Instagramはこちら
バービー すごい。Instagramを拝見すると、何品もあるんですね。おいしそう。
西川 ダイエット用とか増量したい人用とか、いろいろなプランがあるので、なりたいカラダに沿って自分に合った栄養の食事を食べられるんです。
 冷凍で定期的に届くから、受け取って温めて食べるだけで食事管理ができるし、メニューも豊富でサラダチキンに飽き飽きするダイエットをしなくて済みます。
画面をタップするとInstagramページへ
バービー お二人とも、起業される前と後では、何か変化はありましたか?
西川 楽しいことも苦しいことも全部が10倍に感じるようになりました。日々生きてる、という感覚で。
 今思えば自分が会社勤めをしていた頃って、強めの言葉を敢えて使うと、“死んでいるように生きてた”な、と。
 自由も責任も増えたので、日々エキサイティングで楽しく過ごしています。
石井 私はメディアを立ち上げて起業したときの変化よりも、生理用品の事業を始める前のほうが変化は大きかったですね。
 メディアはマネタイズに時間がかかりますが、「Nagi」は特にプロダクトマーケットフィットが早かったので、事業成長とともに日々のスピードがかなり速くなったように感じます。

なぜ、ビジネスを始めるのにいい時代なのか

バービー 私、最近受けるインタビューのほとんどのテーマが若い子向けの「自己肯定感」なんですよ。取材の8割くらいが、「自己肯定感が低くて、自分に自信がないです。どう生きたらいいでしょうか」といった主旨。
 起業しているお二人は、そのあたりどうですか?
西川 実は私も自己肯定感が結構低くて、上げるための努力をしています。
 会社の成長とともに自信もついていくのかと思いきや、自分の目線が上がっていくスピードが速いんですよね。
バービー 起業してキラキラ働いていると、世間からはもともと自己肯定感が高いように見られていると思いますが、実はあまり関係がないんですね。
西川 自分の周りのレベルもどんどん高くなっていくので、その分、憧れの基準も上がっていってしまいます。
石井 自信があるから起業するというよりも、自分のやりたいことがまずあって、それを実現する手法の一つとして会社を立ち上げるという選択を取ったので、起業することに対する怖さはなかったですね。
バービー とにかくやりたいことがあったから、動かざるを得なかった。
石井 そうですね。あと、今ってSNSやクラウドファンディングがあるので、ミニマムでも始められると思います。そういう意味ではハードルはかなり下がっているのではないでしょうか。
バービー たしかに。私のイメージでは起業家って、経営者同士の人脈を培って、うまいこと気に入られて、という手続きを踏むものだと思っていたんですよ。会食を何度も重ねて、仲良くなったら案件の話を始めましょうね、と何年もかかる。
 でも、今はそうじゃないルートもありますものね。会食なんかせずともオンラインで15分で済むわけで。
西川 すごくいい時代なので、皆さん早く行動したらいいのにと思っています。コロナ禍の市場の動きに合わせたビジネスを打つチャンスでもありつつ、そこを狙ったプレイヤーも増えているので。
バービー 西川さんの事業はコロナ禍とも相性がよかったように思いますが、いかがでしたか?
西川 まさにそうですね。自宅で調理される方が増えて、同じメニューに飽きた方が利用してくださったり、自粛で動かないから健康的な食事をしたい人がすごく増えたり、かなり追い風になりました。
 また、飲食店さんと提携して、うちの食事をウーバーイーツで配達するといった取り組みをしたことで、売り上げが90%くらい落ちていた飲食店さんで初月100万円ほど収益が出て、うちの食品も広まってWin-Winなんてこともありました。
石井 私たちの場合は、コロナ禍でもそうじゃなくても生理が来ることは変わりないので、あまり関係はありませんでしたが、在宅やリモートワークが増えたことで、「Nagi」の商品を試しやすい方は多かったみたいです。
 吸水ショーツは新しいプロダクトなので、まずは、家の中で試してみたいという方が多くいらっしゃいました。

ビジネスツールとしてのSNS

バービー 最近はSNSもビジネスに欠かせないツールだと思いますが、どんな活用をされていますか?
石井 私たちはInstagramのライブ配信でよくお客様の声を聞いています。例えば、欲しいショーツのカラーや形を聞いて、そのまま商品開発に活かしたり。
バービー 顧客リサーチをそこでしちゃうんですね。
石井 そうですね。2パターンの案を見せて、「どちらが好きですか?」とストーリーズのアンケートスタンプでヒアリングするなどもできます。
西川 私もInstagramのライブ配信で既存のお客様の課題感や要望を聞いて、商品開発に活かすことはやっています。
 あと、ダイエットアカウントや筋トレアカウントってひとつのところに固まっているので、一回タグ付けしてもらえると広がる感触はありますね。
バービー 投稿からECに繋げることも?
石井 多いですね。最初にブランドを始めたときにはTwitterがバズったので、Twitterからの流入が多かったんですが、今はInstagramからの流入のほうが多いですね。
画面をタップするとInstagramページへ
 「Nagi」の場合、ビジュアルからパッケージ、HPまでクリエイティブにとても力を入れているので、Instagramでも世界観を大切にしながら運用しています。
 プロダクト自体が新しいので、使ってもらいやすくするために、すでにユーザーの方々の声を届けるようなコンテンツを作ったり、機能訴求をしたりと、ビジュアルとのバランスをとりながら運用をしています。
 また、ショッピングタグの付与や、ストーリーズではスワイプアップで商品詳細ページへの導線をつくったりなどと、わりと地道な運用をしています。
バービー 直接的に商品について投稿する以外にはどんなことをされていますか?
石井 生理にまつわる話はもちろんします。あと、女性をエンパワーするというミッションをかかげた会社ですし、「Nagi」のブランドからもボディポジティブなメッセージを発信しようと思っています。
 日本の下着ブランドだとまだまだ細いモデルさんが多いのですが、様々なサイズのモデルさんを起用するようにしています。次回の撮影では妊婦さんにもモデルとして出ていただきます。
バービー そういったメッセージ発信は、SNSと相性もいいですよね。
石井 そう思います。ボディポジティブなリアルサイズのモデルさんにお願いして出ていただいて。ただ、日本のモデル事務所にはそういうモデルさんがなかなかいないので、モデル探しも大変です。
バービー 私はちょうど先日、PEACH JOHNさんとコラボしている下着のリアルサイズモデルオーディションをやって、立ち会わせてもらったんですよ。
 こういう考えに賛同してくださっている方たちが「恥ずかしいけど、一歩行動したい」とたくさん来てくださって。リアルサイズモデルとしてこれからキラキラ輝きたい人は実はたくさんいるので、うまくマッチングするといいなと思います。
石井 たしかに、オーディションすればいいんですね。
バービー 「Tバックとかもありますけど大丈夫ですか?」と一応聞くと、「むしろ出したいです!」「この体型を出したいんです!」と皆さん言ってくださるんですよ。
 もちろん、どこでも構わず出したいわけではなく、同じ考えを持つ場所で、その意見を表明するために、恥ずかしいけど頑張りたい、って。
石井 素敵ですね。
バービー ここまでは無料の投稿について伺いましたが、有料のSNS広告は利用されてます?
石井 商品の在庫がもう少し拡大できるようになったら、広告費をかけてみたいと考えています。今後やるとしたらInstagramの「ストーリーズ広告」かなと思っています。 
 目的にもよると思いますが、周りのアパレル企業や女性向けのブランドだと、認知という意味では最も効果がありそうだなと。
西川 うちは広告も打っていて、実はそこからの流入が多い。でもSNSって、広告を打たずとも自分で広告媒体を持っている状態だと思っています。 
 実際、知人でまだ起業はしていないけど、Instagramのフォロワーが増えたことでプロダクトをリリースしてみたら一瞬で売れた人もいました。SNSをやるのはコストもゼロですから、起業において本当に強いツールだと思っています。
石井 ブランドやサービスを広げやすいというだけでなく、信用もされやすいですしね。

投資家への説明、資金調達のコツ

バービー 最後に、これから起業を志す方々へ、ビジネスチャンスを見つけるコツについてアドバイスをお願いします。
石井 私の場合は、本やセミナーなどでビジネスを学ぶのではなく、自分自身で行動しながら、学んでいくのが一番はやいなと実感しています。
 例えば、資金調達でいうと私たちは3回行っていますが、投資家の人たちに対してどういう説明をすべきなのか、どういう数字を持って行ったら納得してもらえるのかなど、回数を重ねるごとにだんだんと少しずつわかるようになってきました。
西川 単純に周りに聞いてみるのもいいですよ。自分のプランが売れるものなのかがわからなかったら、ターゲット層に当てはまる10人に聞いてみて、みんなが「欲しい」と言えばきっと売れます。
石井 「Nagi」の場合は生理用品でニーズも実感していたのですが、投資家側はほぼ男性なので説明や説得に苦労しましたね。現場レベルには女性がいても、投資の決定権を持っている人はほとんどが男性。
 生理にはこういう苦労があります、と説明しても「いや~、よくわかんないな」「本当にそうなの?」と何度も言われました。
バービー そもそもなんですが、投資家さんにはどこに行けば会えるんですか? 夜のバーとかに行けばいいのかな……。
石井 私の場合は、まずメディアを立ち上げようと思ったときに、それを周りに話していたら、ワンメディアの代表である明石ガクトさんを紹介されて。最初の資金調達のときには、ワンメディアや、彼らとの繋がりがあるベンチャーキャピタルをご紹介いただきました。
 繋がりが何もない場合は、「シード 出資」とかで検索すると、ベンチャーキャピタルがたくさん出てくるので、お問い合わせフォームなどから直接送ってもいいと思います。
バービー なるほど! 具体的でわかりやすいです。
西川 ただ、知識がない状態で投資家さんからのお金をたくさん入れると、その後の会社経営が大変になるので、勉強してからのほうがいいかもしれません。私は起業家仲間に教わりました。
バービー 起業家仲間には、どこで知り合ったのでしょう?
西川 私の場合は、最初はバーでしたね。それに、実は「Muscle Deli」の前にも一度起業していて、そのときはバーの飲み仲間と会社を作ったんです。
バービー やっぱりバーに行けということなんですね!(笑) 
 あと、仲間と会社を作ったとおっしゃいましたが、志が近い人と一緒にやって、右腕、ナンバー2になるのもアリですよね。
 私はクラウドファンディングや資金調達はできない立場なので、いろんな可能性に満ちているのが羨ましい。SNSの力を自由に活かしながら、ぜひ頑張ってほしいと思います。
2016年に女性起業家を支援する「#起業女子」プログラム(以下「#起業女子」)をグローバルでスタートしたFacebook社。これまで47都道府県でセミナーを展開しており、のべ4500人以上の日本の女性起業家、あるいは起業を志す女性が参加されました。

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