2020/9/19

【武部貴則】新たな仮説を生み出す「ブレとズレ」の思考法

武部 貴則
東京医科歯科大学・横浜市立大学・シンシナティ小児病院
人生100年といわれる超高齢化社会においては、「医療の役割を開放し、その活動領域を広げていくことが、必然であり必須」だと語る、医師の武部貴則氏。

そのためのアプローチとして、武部氏が提唱するのが「ストリート・メディカル」という、まったく新しい医療の考え方だ。

ストリート・メディカルでは、医療に「クリエイティブ」の発想を取り入れることが大きなポイントになる。だが、異なる領域の考え方を融合するにあたっては、さまざまな困難が伴う。

第2話では、「異世界」の融合を成功させるための、武部氏の思考法にせまりたい。

人はなぜ「メタボ」を気にするのか

──ストリート・メディカルでは、「医療とクリエイティブの融合」がカギになるということですが、実際のプロジェクトでは、どのようなプロセスで企画や立案が進んでいくのでしょうか?
武部 例えば、前回少しご紹介しましたが、今度製品化が決まっている「アラートパンツ」というプロジェクトがあります。
これは、「メタボな社員が大勢いるのでなんとかしたい」という、某大企業からの依頼でスタートしたものです。
【新】人生100年時代のカギは「人の感性に寄り添う医療」
前回の話にも出ましたが、メタボ対策というと、従来は「糖尿病になりますよ」といった形で恐怖を煽ることで、人々の健康意識に訴えるというアプローチが主流です。
しかし、この手法がそれほど奏功していないとなると、「恐怖を煽ると健康意識が高まる」という前提を考えなおす必要があります。このように、自分の考えを前提からぶらすことを、私は「ブレの思考」と呼んでいます。