2020/9/6
【特別対談】財政赤字を乗り越え、次の時代をつくる方法
新型コロナウイルス感染症はさまざまな産業に大きな影響を及ぼし、国民の生活にも大きな打撃を与えた。
日本政府はコロナへの緊急経済対策として、国民1人あたり一律10万円給付を実施。国が抱える財政赤字は大きく累増したが、この経済危機をどう乗り越えていけばいいのか。
今週の「The Prophet」では、新刊『現代経済学の直観的方法』(講談社)が話題の長沼伸一郎氏にご登場いただいた。最終回は特別バージョンとして、予防医学研究者・石川善樹氏との対談をお届けする。
長沼氏から大きな影響を受けたという石川氏。2人が考える経済危機の乗り越え方、デジタルシフト期の生き方とは。
財政赤字で滅びた国はない
──長沼さんは新著『現代経済学の直観的方法』で、「経済とは何か」をゼロベースで捉え直し、再解釈する試みを行っています。コロナ下の日本では、緊急経済対策として実施された10万円の特別定額給付金のように、過去に類をみない財政政策が行われていますが、長沼さんはどうご覧になりましたか?
長沼 経済は、何らかの形で縮小均衡の状態に陥ってしまった場合、自力で拡大するのは難しく、外から一度資金を注ぎこむことが必要になります。その財源として頼られるのが国債発行です。
今回の現金10万円の特別定額給付金を実施するためには、約12.8兆円が必要です。財源は国債で賄われるそうで、給付金対策を含めた国債発行は過去最大の58.2兆円です。以前から、日本の財政は危機的状況にあると言われてきましたが、ここまで膨らむと財政的に破綻するのではないかと恐れる人もいるのではないでしょうか。
しかし、歴史を振り返ると、財政赤字だけが原因で滅びた国は意外にもありません。例えば、イギリス。18世紀半ばから19世紀にかけて産業革命が興ったイギリスですが、産業革命前は国が経済的に破綻しかねない程の危機に瀕していました。