2020/8/15

【解説】イスラエルとUAEが「国交正常化」に込めた思惑

NewsPicks記者
「より平和で安全な中東に向けた大きな一歩だ」
8月14日、ホワイトハウスはこのような声明とともに、長きにわたって対立してきたイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化に向けて合意したと発表した。
イスラエルとUAEは今後、投資や大使館の設置、それに安全保障などについて具体的な合意内容を交渉する。
イスラエルはかねてから計画していた入植地の併合計画の一時停止も表明。UAEとの合意に向け、配慮を示した形だ。
イスラエルとUAEは、長きにわたって「犬猿の仲」と言われてきた。
UAEは、その国名の通り、アラブ人の国家だ。
UAEにとって、「同胞」であるパレスチナ人(パレスチナに住むアラブ人)に迫害を続けてきたイスラエルは、そう簡単に手を携えることはできない相手である。
その両国が国交正常化に合意することはまさに「歴史的」であり、それぞれにそう動かざるを得ない、のっぴきならない事情があるとも言える。そしてその背景には、アメリカの意向が強く働いているのは明らかだ。
当事者たちはどんな思惑の元に動いたのか、整理していこう。
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「味方」を増やしたいイスラエル

まずはイスラエルの歴史を見ていこう。
現在のイスラエルの地にはもともと、アラブ人の一派であるパレスチナ人が居住していた。
ただし、この地は、ユダヤ教の聖地がある場所でもある。そのためユダヤ人は国家建設の夢を長きにわたって抱いてきた。
転機が訪れたのは、1948年。
ユダヤ人たちが世界各地からイスラエルに集まり、アメリカやイギリスの支援を受けて建国を宣言する。
追い出された格好となったパレスチナ人たちは難民となった。アラブ諸国はイスラエルを認めず、イスラエルと対立。第1次中東戦争(1948-49年)が始まる。
イスラエルはこの戦争に勝利し、領土を広げるとともに、1949年5月には国連にも加盟した。
欧米諸国から手厚い支援を受けたイスラエルは、1970年代までにアラブ諸国と計4回にわたり戦争を繰り広げ、全勝。一方で、地域内での完全な孤立化を防ぐため、アラブ諸国との国交正常化の模索も続けてきた。