2020/7/27

【山本康正】何をするにも「お金」の勉強をしないと話にならない

山本 康正
dnxベンチャーズ インダストリーパートナー
京大、東大、ハーバード、三菱東京UFJ銀行、ニューヨーク、グーグル、シリコンバレー、ベンチャーキャピタル……。DNX Venturesのインダストリー パートナー、山本康正氏の略歴には多様なキーワードが並ぶ。

しかし、その軌跡に目を凝らすと、単なるエリートとは違う「意志」が透けて見えるはずだ。その意志とは、「理系と文系」「民間と政府」「日本とシリコンバレー」など異なる分野の架け橋になりたい、というもの。異なる分野をつなぐには、広く、かつ深い知識を学ばねばならない。

キャリアを進めるたびに未知の世界へ飛び込んでいく山本氏の軌跡を追いつつ、働くうえで大事にしている「仕事の哲学」を聞いた。(全7回)

三菱東京UFJ銀行に就職した理由

大学院を卒業した私は、ニューヨークにある三菱東京UFJ銀行(当時)の米国本部に就職しました。
大学院にいたとき、外務省でインターンをしていたことを前回申し上げましたが、そのときから私にはこんな問題意識が芽生えていました。
三菱東京UFJ銀行(当時)の米国本部時代
ODA(政府開発援助)の一環に、円借款があります。政府がミャンマーなどの途上国を支援する際に50億円くらい貸す。
しかし、その審査に非常に時間がかかる。だいたい半年か1年以上です。こんなにかかるの?と衝撃を受けました。
その一方で日経新聞には、「政府はどこそこの会社に300億円の融資を決めた」とか「400億円の出資をすることになった」と報じられている。
そのとき私の頭に、こんな仮説が浮かびました。
「こういった非営利の(公の)ために回っているお金は、世の中に出回っているお金の1パーセント以下なんじゃないか」
そして、おそらくこの1パーセントをちゃんと動かし増やすのは、99パーセントのほうをちゃんと理解できない限り、難しいのではないか。 
そう考えると、自分は金融のことをそれほどわかっていないと思いました。お金はどこに行っても絶対使うツールです。おそらくお金のことがわかっていなければ話にならない。
目的ではなく、社会を良くするための手段としてお金についてちゃんと勉強しようと思い、金融機関に就職しようと考えました。
(写真:baona/iStock)
金融機関といっても幅広く、証券や生命保険などいろいろありますが、やはりお金が集まっている場所に行ったほうが話が早いだろう。そう考えて銀行を選びました。
東京にある投資銀行などからも内定をいただきましたが、できればニューヨークで働きたかった。
実は、これも完全に仮説ですが、おそらくニューヨークのほうが進んでいて、そこで行われていることが10年後に東京にやってくるだろうと思ったのです。