【シバタアキラ】仕事は「誰と働くか」が大事

2020/7/7
急成長を遂げる米ベンチャーDataRobotの日本担当チーフデータサイエンティストとして「AIの民主化」を推し進めるシバタアキラ氏。
そのミッションをつかむまでのキャリアは異色だ。高校を中退し、ミュージシャンに憧れた10代を経て、ロンドン大学とニューヨーク大学で素粒子の先端研究に従事。ボストン コンサルティング グループに転じた後に起業。「絶望の時」を経て天職に出会った。
高速で成長を続けるシバタ氏の思考と哲学を追う。(全7回)

数学はグローバルな言語

ロンドン大学クイーン・メアリー校に入学したのは2004年のことです。
日本で英会話学校にも通い、万全のつもりでしたが、現地ではほとんど言葉が通じず、しばらくは苦戦の日々でした。
ロンドン大学クイーン・メアリー校(写真:Kenneth Taylor/iStock)
友達もなかなかできずに孤独感を募らせていた私にとって、救いになったのは「数学」でした。
数学はグローバルな言語だといわれますが、まさにそうで、英語ができなくても数式は扱える。高校ではベクトルから分からなくなってしまった自分には皮肉な展開です。
数学で評価してもらえたことで、日本ではあまり勉強していなかった数学に真面目に取り組むようになり、その延長で興味の扉が開けたのが物理学です。
(写真:Rost-9D/iStock)
「目に見えないもの」を見ようとする物理学の世界に触れながら、未知への探究の面白さに没入していきました。
見えないものをもっと深く、さらにもう一段深く……と追い求めた結果、物質の最小単位である「素粒子」が研究テーマに。イギリスは物理学の父・ニュートンが生まれた国であり、マックスウェルの電磁理論に触れたときは感動しました。
2011年に、高エネルギー物理学の分野で博士号を取得しました。
素粒子研究は物理学の中でも膨大なデータを扱う分野でした。ビッグデータ解析によって得られる成果を日々リアルに体感していた経験が、今の仕事にもつながっています。
頭ではなく体で、データサイエンスの価値を吸収していたのです。

データセンターは“ライブ会場”

物理学というサイエンスに魅了されながら、相変わらずコンピューターは好きでした。
後から気づいたのですが、音楽とコンピューターには明確な共通点があります。何が似ているかというと、「音が鳴る」ところです。