ECBのイタリア国債購入額、4─5月で511億ユーロ 発行額上回る
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イタリア国債の買い入れが相対的に大きかったこと自体は、市場の見立て通りだったわけですが、Lagarde総裁が柔軟性を強調したほどには極端でもなかった印象があります。
その意味では、皮肉なことに、大規模なPEPPに拘らずイタリア国債のスプレッドが縮小しないという悲観論は必ずしも正しく無かったことになり、今後のPEPPの一層の規模拡大への期待が高まることになりそうです。
ただし、一方でPEPPについてはドイツ国債の買い入れも予想外に多く、記事が示唆するようにcapital keyをかなり律儀に守った印象を受けます。もしもこれが、ドイツ憲法裁判所による例の判決の間接的な影響だとすると、この点もまた、PEPPによる柔軟性の発揮には相当な制約があることを示唆することになります。PEPPの内訳公表というのは今後ないのではないかと思われましたが、行われました。イタリア国債の上振れは顕著でしたが、その割に金利低下は限定的であったことはECBにとってはネガティブです。
しかし、PSPPにおける3-4月のイタリア国債購入が完全にキャピタルキーをオーバーシュートしていたところから5月はかなり抑制されています。市場の落ち着きを見て、柔軟な運営に切り替えたことがよくわかります。一方、PSPPでドイツ国債を買っていない割には、PEPPで購入しています。これはPSPPの代替購入なのか?それであれば「ドイツ憲法裁のけん制」に対するけん制なのか?など色々な読み筋に発展します。
ECBウォッチの面で厄介なことはPSPPとPEPPを合計しつつ、国債保有の実相に迫る必要がある、ということです(PEPPではギリシャ国債も買われています)。いずれにせよどうみても持続可能性の無い3-4月の購入ペースから軌道修正はちゃんと図られているという印象は受けました。報道面でもPSPPとPEPPを合計した上で事実を伝える必要があります。ECBの政策運営はFRB以上に複雑怪奇なものになっているように思います。