封鎖なしのスウェーデン、「集団免疫」には程遠い状況 首都の抗体率7.3%
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「集団免疫」アプローチから方針転換した英国は欧州で最大の死者を出す国となり、ロンドンでは抗体検査の陽性率は14%に達しています。ストックホルムの倍。一方でスウェーデンはロックダウンなしでもマイナス成長。GDPは通年で7%減と予想されています。死者数は北欧で突出。どちらも狙い通りとはいかず、というのがこのウイルスの厄介なところなのでしょう
何か統計が示された時、考察を始める前にまず与えられた数字を批判的に吟味することが大切です。ここでその例をお示ししたいと思います。
まず、抗体検査の系は数十を超える種類があり、各国で採用している検査系が異なります。スウェーデンでどのような検査が用いられたかはわかりませんが、他国のそれとスウェーデンのそれを単純比較することは残念ながらできません。検査によって精度が大きく異なるのです。
例えば、感度50%の検査を用いている場合、この検査では、実際の感染者の50%しか検出できません。この場合、検査での「抗体率」は7.3%かもしれませんが、実際の抗体保有率は15%かもしれません。
また、多くの抗体検査が(風邪を起こす従来型の)コロナウイルスにも交差反応を起こす可能性が知られています。すなわち、最近旧型のコロナウイルスの風邪をひいたという方も「抗体保有者」として捉えている検査もあるはずです。報告されている感染者数と比して、「抗体率」がとても高い値を報告している地域では特に、そのような可能性が指摘しえます。
このように検査の系で大きくバラツキがあることから、国際的な比較をしたい場合には、全ての国で標準化された同じ検査系を用いて行う必要があります。現在公表された値で国際比較するのは、さながら全く異なる縮尺の物差しで大きさの比べ合いをしているようなものです。
加えて、抗体検査はもちろん国民全員に行うのは不可能なので、必ず抽出した限られた対象者に行なっているはずです。このため、地域のことを語る上では、この対象者たちが本当に地域全体を適切に反映した人なのかを考慮して検討する必要があります。
このような背景から、本来「地域の抗体率」を示す場合には、「幅を持った推定値」が示されるべきですが、ここでは単一の数字が示されており、比較をする上で注意して読む必要があります。本来必ず「幅」があって然るべき数値なのです。
このような理由から、そもそもこの数値で適切な国際比較ができますかと問われれば、答えはノーではないかと思います。ただし、例えば同じ地域で同じ抽出の仕方で同じ検査系で評価を続けていけば、その推移を追うことには大きな意味があると思います。7.3%という数字がどこまで正しいのか、実態からブレはあると思いますが、
だとしても、これが実際は70%です、ということはないでしょうし、
いずれにしても集団免疫獲得にはまだほど遠いということは明らか。
封鎖しなくても数ヶ月で集団免疫を獲得することは難しいという1つの知見となるかと。
逆に、長期的にみた感染状況が、封鎖した国と大きく違わないということにもしなれば、経済的被害も考慮すると封鎖はしないでよかった、という結論になるかもしれません。