(ブルームバーグ): ソフトバンクグループの孫正義社長は18日、オンラインで行った決算説明会で、厳しい経営環境を受けて今期(2021年3月期)の配当計画は未定だとし、「ゼロ配当もあり得る」との認識を示した。期初に配当計画を未定とするのは上場以来初めて。

孫社長は配当について、経済危機の中でさらに資金が必要になる可能性があり、「より安全にいこうと思っている」と発言。「増配ということはあまり考えられない」と述べた。ビジョン・ファンドの評価は可能な限り保守的に見積もっており、「評価益よりは評価減の方が可能性はまだまだ大きい」とみているという。

新型コロナウイルスの影響で、同社が投資している「ユニコーンはどんどん落馬している」とも説明。15社程度は倒産するだろうとの見方を示した上で、救済出資は行わないと表明した。ただし、危機の中でこそ新規産業も育つため、「無茶をしない範囲の投資を継続する」としている。

ソフトバンクGが同日発表した前期(2020年3月期)決算は、ビジョン・ファンドなどからの営業損益が1兆9313億円の赤字(前の期は1兆2566億円の黒字)となった。配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズやシェアオフィス運営の米ウィーワークなどの公正価値が減少したほか、新型コロナ感染拡大の影響でその他投資先の公正価値も減った。

全体の営業損益もアーム事業の利益悪化などが響き、1兆3646億円の赤字(前の期2兆736億円の黒字)。純損益は過去最大の9616億円の赤字に転落した。

孫社長は、新型コロナは1929年の世界大恐慌と肩を並べる「未曾有の危機だ」と述べ、影響を受けた「ビジョン・ファンドが足を引っ張った」と指摘した。同ファンドの3月末時点の投資先は88社。47社で評価減が発生し、運用開始以来の投資額8.8兆円に対し累計の投資損失は1000億円になっているという。前期の投資リターンは優先出資者がプラス7%、普通出資者はマイナス7%だった。

ファンド2「資金集まっていない」

早稲田大学大学院の池上重輔教授は電話取材で、ビジョン・ファンドは本来ベンチャーキャピタルファンドであり、投資をしてから「最初の数年がマイナスになるのは自然」だと分析。これまでも孫社長は、最悪のリスクが現実化しても「全ての手練手管を使って生き残っている」と述べた。

ソフトバンクGはこの日、保有する中国アリババ・グループ・ホールディング株を利用した金融機関との複数の先渡し売買契約で、115億ドル(約1兆2300億円)を調達したことを明らかにした。3月に発表した自社株買いと負債削減に充てる4.5兆円規模の資産売却計画の一環。残額も「問題なく調達が可能」と孫社長は話した。

一方、ビジョン・ファンド2号に関しては「資金は集まっていない」とし、他のパートナーからの資金募集は控え、自社の資金で投資を継続する考えを明らかにした。親交のあるアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が6月の株主総会で取締役を退任することについては、「彼の人生観の一環と聞いている」とし、「残念だが、生涯にわたって友情は続いていく」と語った。

(孫社長の会見内容や識者のコメントを追記します)

©2020 Bloomberg L.P.