【藤原和博:1.7万字】本当に必要な教育改革と、3つのオンライン運用法

2020/5/21
コロナショックをきっかけに、教育改革の議論が加熱している。オンライン教育の本質とは何か?9月入学への移行は意味があるのか?今、本当に求められる教育改革とは何か。和田中学校・一条高校の元校長で教育改革実践家の藤原和博氏が緊急寄稿する(全3回)
【藤原和博】学校とは何か?先生とは何か?

オンライン以前の問題

コロナ災禍によって3月から学校が閉鎖され、通常の学校教育活動ができなくなった。
動きが早い塾では3月からオンラインに切り替えたところもあるし、私立の学校でも4月からオンライン授業が始まった。
一方、公立校には、3月初旬に児童生徒に1回だけ会った後休校になってしまい、4月初旬に1日だけ分散登校させ玄関前でプリントを配ったが、その後、新しい学年の学級を招集していない先生もいる。教材研究の名目で自宅勤務しているのだが、個別に生徒のフォローをすることは全くできないと嘆く。
オンライン以前の問題なのだ。
藤原和博(ふじはら・かずひろ)/教育改革実践家
1955年東京生まれ。 東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。 東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、 ヨーロッパ駐在、1996年同社フェローに。 2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。2016年春から奈良市立一条高校校長として2年間勤務後、東京に戻る。著書は『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』など多数。
受け持つ児童生徒が家庭でどう勉強しているのかを先生が全く知らないという状況は異常だが、個人情報保護条例をエキセントリックに解釈している学校では、子どもに直接アクセスしようとしても、連絡網を作っていないからできないのだ。
ちなみに、私が和田中の校長時代(2003~2008年)にもこの問題が議論になったが、緊急時のことを保護者に理解してもらい、連絡網は作っておいた。
2016年から2018年まで勤務した奈良市立一条高校では、後に語るように全生徒の個人所有スマホをWiFiでつなぎ授業中も生かして使う「スーパースマートスクール」を目指したから、Cラーニングというシステムを介して生徒と先生はつながっている。
コロナ騒ぎが始まってもオンライン授業への移行はスムースだったようだ。
オンラインで自律的に学習している子とそれができない子の間に格差が広がっていることは間違いない。
特に中学生以上だと半分は塾通いをしているからすでにオンラインで学習のフォローが効いているし、学校の先生とは別に、リクルートのスタディサプリやDMM英会話などでネットの向こうに特定教科の気に入った「恩師」を見つけた児童生徒は自分で勉強を進めているだろう。
先取りしてどんどん進めるから、学校の進み具合より早い可能性もある。
(写真:ferrantraite/iStock)
一方、家庭にWiFi環境がなく、YouTubeをサクサク見られない、経済的に厳しい児童生徒(ひとり親世帯を中心に貧困家庭の子は全体の6~7人に1人と言われる)は、誰にもフォローされないで放っておかれている。
勉強どころではなく、ネットゲーム三昧で生活習慣を乱しているかもしれない。
この間、給食もないし子ども食堂もほぼ閉まっていた。虐待が熾烈化する可能性も含めて、コロナ以前には学校の先生が苦労してフォローしていた役割を誰が担うのか。
地域社会の力も弱まっているから、改めて学校の再開が待たれるところだ。

「オンラインか、学校か」ではない

さて今回は連載の決定版として、5月12日に放送されたNewsPicksの特別番組 THE UPDATE 「オンライン教育は日本を救うのか?」で行われた議論も踏まえながら、コロナと学校教育について、私の教育改革実践家としての論点を、改めて文章化してみようと思う。