【西口一希】ロート史上初100億円超ブランド「肌ラボ」の育成

2020/6/18
消費が動き出した今、再び「マーケティング」が注目されている。
P&G、ロート製薬、ロクシタンジャポンで、数々の売り上げ記録を樹立し、2017年にスマートニュースに参画。圏外だったアプリランキングを1年後に1位まで引き上げるなど、「結果を出すマーケター」として知られる西口一希氏。
意外にも、そのキャリアは華麗な成功録でなく、泥臭い失敗経験から得られた学びの蓄積だったという。「9segs(ナインセグズ)モデル 」「N1分析」など独自の顧客戦略理論を携え、新たな挑戦を続ける西口氏が初めて語る「仕事の哲学」とは。(全7回)

ロート製薬への転職

新卒で入社し、16年働かせてもらったP&Gでは、背伸びどころかジャンプしなければ乗り越えられない課題が次から次に降ってきました。
実際に成功よりも失敗がはるかに多かったのですが、ビジネスを学ぶには最高の鍛錬場でした。
そういう環境を私自身も望んでいましたし、実際、入社前に「Up or Out(昇進しなければ去れ)」という文化であることを承諾していました。
実際にOutになりそうな場面がありながらも、クビ宣告を受けずに働かせていただいて、今でも感謝しています。
西口一希(にしぐち・かずき)/Strategy Partners 社長、Marketing Force 共同創業者
1967年兵庫県生まれ。1990年大阪大学経済学部卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとして、「パンパース」「パンテーン」「プリングルズ」「ヴィダルサスーン」などのブランドを担当。2006年ロート製薬に入社。執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。2015年にロクシタンジャポン社長に就任。2016年にグループ最高利益達成、アジア人初のグローバルエグゼクティブメンバーに選出され、社外取締役に就任。2017年スマートニュースへ日米のマーケティング担当執行役員として参画。2年で日米累計5000万ダウンロード、上場前の時価総額1000億円超のユニコーン企業化に貢献し、マーケティング戦略顧問に。2020年6月現在、事業コンサルタントと投資業務を行うStrategy Partnersの社長。顧客戦略構築を行うMarketing Forceの共同創業者。
ディレクターというポジションまで昇進していましたが、次にUpするには日本以外でのアサインメントに挑戦して結果を残さなければいけません。
ありがたいことに海外赴任の可能性もいくつかお話をいただきましたが、海外には出ることなく、2006年にロート製薬に転職することを決めました。
神戸という住み慣れた街を離れたくなかったという理由もありますが、ちょうど退社する1年前に、ロート製薬の山田邦雄社長(現会長)にお会いし、P&Gの基準ではおよそ理解できないビジネスに興味を持っていました。
ここでも、たくさんの成長の機会をいただきました。現在の私の「顧客起点」のマーケティング思想と9segsモデルが形を成したのはロート時代のことです。