【真相理解】スウェーデン、ロックダウンしない理由

2020/5/13
あまりに現状が正しく伝わっていない──。
新型コロナウイルスをめぐる対応で、独自のアプローチから、世界の耳目を集めているのが、北欧の福祉国家スウェーデンだ。
スウェーデンでは、厳格なロックダウン(都市封鎖)を実施せず、中学生以下の休校措置も行わないなど、ほかの欧米国家とは異なるブレない政策で、新型コロナへの対応を進めている。それでも米ジョンズ・ホプキンス大のデータによると、4月以降、感染者数も死者数も増加のペースは緩やかになっている。
とはいえ、あまりに独自路線を続けるだけに、多くの誤解も出ている。
一つは「集団免疫」という言葉だ。ロックダウンをせずに、国民の大半が感染することで、集団免疫を目指す政策を取っているという言説が独り歩きしてしまっているが、実は、それは正しくない。
そこで、NewsPicks編集部は、スウェーデンの医療現場で働くカロリンスカ大学病院泌尿器外科の宮川絢子医師と、現地在住のエッセイスト久山葉子氏を直撃。日本のメディアが伝えきれていない、スウェーデンの「新型コロナ対策」のリアルについて、政治、医療、教育の3ポイントにまとめて伝える。
そこから見えてくるのは、日本が真似したくでもできない、合理化が徹底された国家の仕組みだ。
INDEX
①「集団免疫」は目指していない
②ムリな「延命」はしない医療政策
③休校しない「もうひとつの理由」
結論:なぜ日本は、真似できないのか

①「集団免疫」は目指していない

「ロックダウンにはエビデンスがない」。
公衆衛生庁のアドバイザーであり、WHO(世界保健機関)の感染症対策のメンバーでもあるヨハン・ギーゼケ氏はこう断言する。
学校を全面閉鎖にしなかったのも、(子どもの感染リスクという)エビデンスを検討した結果だったという。
ギーゼケ氏はこれを踏まえた上で、「『集団免疫』は副産物である」と明言している。
それにもかかわらず、世界中が「スウェーデンは集団免疫の獲得を目指している」と勘違い。ロックダウンをしないことに対する、誤った解釈が広がってしまった。
宮川 スウェーデンはそもそも集団免疫を目的にしているわけではありません。