【核心】新型コロナウイルスで変わる世界の「食」

2020/4/30
NewsPicksのグループメディア米Quartzから、新型コロナウイルス感染の拡大による社会的・経済的なインパクトについて、配信された内容をお届けします。
INDEX
①代替肉は生き残れるか
②世界中で外食が減っている
③世界をアップデート

①代替肉は生き残れるか

ここ数年、Beyond Meat(ビヨンド・ミート)やImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)をはじめとする植物性の代替肉を提供する企業は、ファストフードチェーンや高級レストラン、食料品店で販売が開始されたことで、急成長を遂げてきました。
しかし、いずれも不況やパンデミックを乗り切った経験はありません。また、家計が逼迫(ひっぱく)し、最低限の衣食住が最優先になっている状況下で人々が肉類の代替品を食べたいと思うかどうかと問われれば、なんとも答えに窮するところです。
植物性の代替肉メーカーにとっての光明は、従来の食肉業界が大混乱に陥っていることです。
4月28日の時点で、労働者が新型コロナウイルスに感染したため、米国内の15の食肉加工工場が閉鎖されました。この閉鎖は食肉生産の約25%に影響を与え、Tyson Foods(タイソン・フーズ)の会長はニューヨーク・タイムズ紙に全面広告を出し、「何百万ポンドもの肉が市場に出回らず、フードサプライチェーンが壊れつつある」と警告しています。
肉が不足した場合、消費者は植物性の代替肉を買うことを選ぶでしょうか? データが示す答えは「Yes」です。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、米国では4月18日時点で、前年の同時期と比較して、その週の植物由来の代替肉の売り上げは200%増加。通常の肉の売り上げは同30%増加しています。また、インポッシブル・フーズCFOのDavid Lee(デイヴィッド・リー)は、同社のサプライチェーンは新型コロナウイルスによって寸断されていないと述べています。
市場の動きは、ビヨンド・ミートの株価に反映されています。2月中旬、ウイルスの影響でレストランや外食産業が閉鎖を余儀なくされたため、同社の株価は急落しました。しかし、食肉加工工場の閉鎖のニュースが流れ始め、4月初旬には株価が再び上昇し始めたのです。
食料品店での販売が好調で、食肉不足の可能性があるにもかかわらず、ウォール街は長期的には植物由来の製品について楽観視していません。
UBSのアナリストは4月27日のリポートで、ビヨンド・ミートの株価目標値を90ドルから73ドルに引き下げました。 同アナリストは、同社が初期にリソースを投入した小売業では好調に推移しているものの、レストランや外食産業での事業損失を補うほどではないとしています。両社とも小売りにもレストランにも進出していましたが、インポッシブル・フーズは有名チェーン店やセレブシェフとの提携に力を入れてました。
UBSのアナリストは、米国での失業率上昇と景気後退の可能性に注目しており、これは外食産業と食品業界の両方に打撃を与えることになります。
同アナリストは「我々が懸念しているのは、まず、ビヨンド・ミートの独立系の顧客の多くが非常に苦戦を強いられている可能性があること。さらに、全国チェーンの顧客も、投資家が予想しているほど来店者数は急速に回復しないかもしれない」と述べています。
一方、香港と中国では逆の結果になっています。世界経済フォーラムは、双方が新型コロナウイルスの流行が始まって以来、植物性の代替肉の需要が増加していると伝えています。サプライヤーは、買い物客は動物性の肉と新型コロナウイルスの関連性を懸念しており、多くの人が植物性の製品に目を向けるようになっていると言います。
スターバックスは、ビヨンド・ミートの製品を含む、植物由来のランチメニューを中国で展開しようとしていると述べています。インポッシブル・フーズは中国市場に参入するための規制プロセスを進めています。
世界中で、植物由来の代替肉は縮小していくのか、それとも輝きを増すのか、今がその運命の分かれ道なのです。

②世界中で外食が減っている

食費における、レストランやバー(テイクアウトを含む)での飲食が占める割合は、半世紀以上前から緩やかに上昇しています。1970年には、米国の食費支出の約4分の1しか外食に使われていませんでした。しかし、2020年の初めには、その数は約50%に達していました。
リーマン・ショック後の不況により、2008年から2012年にかけて外食の動きは鈍化しましたが、パンデミックはこのトレンドをついに逆転させており、先月の米国の店舗での食料品の購入は、63%近くまで上昇しています。
これは1996年と同水準の数値となります。

③世界をアップデート

・科学者たちはエストロゲンが新型コロナウイルスから男性を救うかどうかをテストしています。
・どのようにしてフォルクスワーゲンの工場は再稼働に向かうのか。
・この危機のもとで作ったCMの表現はどれも似ている
(執筆:Dan Kopf、Chase Purdy、Katherine Foley、Tim McDonnell、Hailey Morey、Kira Bindrim、翻訳:小西悠介、編集:年吉聡太、森川潤)