【全録1万字】「自宅フィットネス」が、バブっている

2020/5/2
この記事は、NewsPicksのグループメディア米Quartzの特集「The home fitness boom(自宅フィットネスのブーム)」の一記事です。

ライザップモデルの終焉

バネッサ・パッカーは、ギリギリのところで難を逃れた。
パッカーがフィットネスジム「modelFit(モデルフィット)」を立ち上げたのは2014年のこと。「テイラー・スウィフトやカーリー・クロスらセレブ並みのスレンダーなボディーを手に入れる」と銘打って、ニューヨークのSohoにスタジオを構えた。
料金は1回40ドルだ。
当時は、こうした「ワンランク上のスポーツジム」が次々登場していた。
ブームに乗り、モデルフィットは2016年、2つ目のスタジオをロサンゼルスにオープン。2016年といえば、バイクエクササイズと筋トレを組み合わせて大ブームになったSoulCycle(ソウルサイクル)の創業者2人が、持ち株を売却してそれぞれ9000万ドルを手にした年でもある。
だが昨年11月、パッカーはフィットネス業界におけるトレンドの変化を感じ取り、2つのスタジオの賃貸契約を更新しないことに決めた。
ちょうどその頃、約1万キロ離れた中国の武漢では、"風邪をこじらせた業者たち"が病院を訪れていた。後に新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と呼ばれる、謎の多い強力な肺炎が確認された最初のケースの1つだ。
だが、新型コロナのパンデミックによって、汗臭いスタジオで体を動かすことが過去の遺物になる前から、パッカーはこの業界の未来はデジタルにあると感じていたのだ。

汗まみれのマシンは嫌だ

「あのとき契約更新を思いとどまって、本当によかったとつくづく思う」と、ロサンゼルスの自宅で電話取材に応じたパッカーは言う。