[カスタニス/レスボス(ギリシャ) 1日 ロイター] - トルコ政府が国境を開放し、国内にいる難民を欧州に流入させると表明したことで、ギリシャ北東部カスタニス近くの国境地帯にはトルコ側から何百人もの難民が越境を強行しようと到着している。

1日も前日に続いてギリシャ警察隊と難民が衝突。投石する難民を追い払おうと警察は催涙ガスを発射した。押し寄せる難民の背後には、さらに何千人もが控えている状態だ。

ギリシャ政府は衝突を国家安全保障上の脅威と主張。ミツォタキス首相はツイッターに「不法にギリシャに入ろうとするな。送還されることになる」と投稿した。

ギリシャ政府筋が提供し、ロイターが閲覧した動画では、催涙ガスは国境のトルコ側からギリシャ機動隊に対して発射されたように見えるものもあった。

ギリシャ政府のペトサス報道官は記者団に「こうした難民は外交圧力をかけるためにトルコ政府に利用されている」と語った。

トルコは2016年、欧州連合(EU)との協定で難民をEUに入境させないと確約したが、今年2月27日に方針転換を表明した。シリアのアサド政権軍による空爆でシリアにいたトルコ軍兵士33人が死亡したためだ。シリア内戦の難民問題で、EUの支援をさらに引き出すことを狙った可能性がある。

今回のギリシャ政府からの批判に対し、トルコ政府側は難民へのギリシャ政府の対応を批判。非難の応酬になっている。

<難民はギリシャの島々にも>

ギリシャの警察によると、1日朝の数時間のうちに、トルコ側の海岸に近いレスボス島、キオス島、サモス島に海路で少なくとも600人が到着した。

ギリシャ北東部の国境地帯では、難民の一部がエブロ川の浅瀬を歩いてギリシャ側に渡った。目撃者によると、集団は最大30人ぐらいで、中には生まれて5日目の赤ん坊を連れたアフガン人の母親もいたという。

同日、カスタニスでは機動隊が警備を強化。その後に難民との衝突が起きた。詳しい状況は明らかになっていないが、ギリシャ政府筋は、一部の難民が金属の棒を投げつけたと主張した。

ブリュッセルのEU当局者は対応¥を協議するため移民相・外相の緊急会合を要請。欧州の対外国境管理協力機構(FRONTEX)は、国境警備を支援するためギリシャと協議に入ると表明した。

ドイツ政府報道官によると、メルケル首相はトルコと国境を接するブルガリアのボリソフ首相と電話会談し、トルコ政府と協議する必要性で一致した。

ギリシャのミツォタキス首相は、欧州理事会の議長を務めるミシェルEU大統領が3日、エブロス地方のトルコとの国境地帯を訪問すると述べた。

<国境は閉鎖と呼び掛け>

今回の危機はギリシャにとって、金融支援を巡りユーロ離脱の瀬戸際に立たされた2015年以来の厳しい試練になる。トルコとの長きにわたる緊張関係にも焦点が当たることになる。

ギリシャ北部の国境地帯で携帯電話向けに自動送信されるテキストメッセージは、ギリシャが国境警備を最大限に強化していると強調し、入国を試みないよう訴えている。

またギリシャのスカイTVによると、カスタニスの国境地帯では拡声器が「国境は閉鎖されている」と英語とアラビア語で繰り返し難民に呼び掛けている。

ギリシャは2015年から16年、欧州へ向かう何十万人もの難民が流入した際に主な玄関口となった。現在も4万人以上がエーゲ海の島々で足止めされ、過密で劣悪な収容施設で暮らしている。

3月1日に国境のトルコ側に集まった難民の数をギリシャ政府筋は

3000人、国際移住機関(IOM)は1万3000人と推計した。

レブロス島ではギリシャ人の少人数の集団が、難民でいっぱいのボートの上陸を阻止しようとし、「トルコへ帰れ」と叫んでいた。先週はこの島で、難民を収容所に入れる計画を巡って機動隊と反対する地元住民が衝突。住民は、島が不相応な負担を強いられていると主張している。