【最前線】コロナの医療現場で、専門医たちが見ていること

2020/3/3
1564人。日本の「感染症」の専門医と呼ばれる人の数だ。例えば、胃や腸(消化器)の専門医は2万人を超えるから、医者の世界でも感染症がマイノリティであることが分かる。
しかも、その1500人の中には、リタイアした人や、クリニックを開業している人、研究者や小児科の医者などが含まれる。
今回の新型コロナウイルスの診療・治療に当たれる、総合病院に勤務している感染症科医は、500人にも満たないと言われる。
NewsPicks編集部は、そんな数少ない感染症専門医の中でも、実際に全国の感染者が発生しているエリアで、日々診療・治療に当たる医師たちに取材を敢行。
パニックを防ぐために、どの病院にどれくらいの感染者がいるかといった情報が公開されていないため、匿名を条件にインタビューに応じてくれた。
未知のウイルスと戦うドクターたちの、貴重な最前線をお届けする。
露呈してしまった「経験不足」
──まずは簡単に自己紹介をお願いします。
感染症の専門家として、北海道の複数の医療機関で新型コロナの治療に当たっています。
愛知県内の医療機関に勤務しています。海外で感染症の治療に従事した経験を持っています。
私も海外を二カ国以上経験しています。感染症の専門家として、武漢からの帰国者の治療に当たるなどしています。
感染症専門医として、大学病院の内科に勤務しています。
──今回の新型肺炎は、やはり感染症という専門性の高い治療が求められるのですか?
肺炎というくくりであれば、感染症の専門的な治療が必要かというと、必ずしもそうではない。例えば呼吸器内科という肺の専門医師もいます。
実際には、感染症界隈ではたくさんいますので、そういった医師が通常対応をしているケースが多いと思います。
あるいは、実際に対処するのは集中治療の専門医師だったり、感染症専門医がサポートに回るというケースもある。
ただし、医療者の感染リスクがどれくらいあるのか、あるいは感染の検査の判断になると、感染症の専門医じゃないと難しいでしょうね。
東京は違うかもしれませんが、全国的に感染症医は少ない。北海道も感染症医がいる病院はあまりないんです。
愛知の場合は、感染症の専門科は大学病院にしかない。今回の治療に当たる指定病院は12ありますが、感染症内科を持つ病院は10もないはずです。
国際空港があるので、感染症内科という“箱”はあるんですが、実際に診療できる経験豊富な医者も、実はいない。
東京だったら国立国際医療研究センター、あと東京都立駒込病院といった大きい病院がたくさんありますし、病院間同士で情報交換や勉強会も頻繁にしていますが。
経験がないから、こういうときにどういうことをすればいいのか、結構知らずにやっている病院もありますよ。僕は海外での経験が生きていますが。
海外では、病気といえば感染症、という国も少なくないですしね。
だから正直、今回は肺炎のウイルスなので、呼吸器内科の医師が対応しているというのがリアルな状況ですね。リソースが潤沢とはいえない。
だから、他の病院などと「こういう治療がいいよね」と情報交換はさせてもらったりはしますね。
──指定感染症医療機関でも、経験やノウハウがあまり蓄積されていないと。
残念ながら。おそらく2009年の新型インフルエンザのときに、指定感染症病棟を使ったことがある病院はあるでしょうが、それから10年使ってこなかった病院がほとんど。
2014年のエボラのときに、国立国際医療研究センターですら、2009年の新型インフルエンザのとき以来、5年ぶりに感染症病棟を使用したくらいですから。
今回のように政府が困ったときに依頼して動ける感染症専門医が、割と少ない。
というのも、日本は良くも悪くも、SARSやMERSを含めて、感染症の対応をあまり経験していないですよね。海外から帰って来た人で、たまに疑わしい人がいたら管理していたくらいで。
だから、実は今回のような修羅場を、この数十年くぐっていないんですよ。
日本の政府も、現場も含めて、いかに脆弱であるかということは、現場の医師たちも理解していると思います。
そもそも感染症内科医が戦後からずっと1000人くらいしかいない状況が続いてきて、経験豊富な人というのもさらに減っているわけですよね。
そこに少し進展があったのは、ここ10~15年の話なんですよ。それこそ先日、YouTubeでダイヤモンド・プリンセスの問題を告発していた岩田健太郎先生の世代が、大きくしてくれているんですよね。
岩田健太郎氏(写真:時事/youtube)
でも、まだまだ充実はしていないんです。だから、こういう危機が起きてしまったときに、その脆弱性が露呈してしまうということですね。
WHO「危険性最高」後の変化