阪大、iPS心筋移植の治験開始 世界初、重症心不全患者に
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手術が無事に成功したのは喜ばしいのですが、安全性と有効性の検証はこれから。約1億個もの細胞を移植していることもあり、治験の経過を慎重に見守りたいです。
コメントを読む限り多くの方は、iPS細胞由来の心筋シートの主な効能について、「心臓と同期して拍動し、病気で弱った心臓のポンプ機能を助けることだ」と理解されているようです。しかし、シートは3カ月間で消失してしまいます。
研究チームを率いる澤芳樹教授はこれまで、心筋シートが分泌するさまざまなサイトカインというたんぱく質に心機能を回復させる効果が期待できる、と説明してきました。澤教授は、その効果がシート消失後も持続するとみていますが、患者さんの体で実際にそうなるかはまだわかりません。
また、研究チームは過去に、太ももの筋肉由来の心筋シートをテルモと組んで開発し、テルモはこの心筋シートを、市販後に有効性を検証する「再生医療等製品」としてすでに販売しています。移植患者の数が目標の60症例に達していないため、テルモの申し出で検証期間を当初の5年間から8年に延長しており、有効性はまだ不明という状況です。
由来細胞こそ違うものの、ほぼ同じコンセプトの心筋シートの有効性がよくわからない段階でiPS細胞を使った臨床試験や治験を開始するのは「時期尚早だ」という意見もあります。
だからこそ、今回の治験の経過については、できる限り具体的に公表してほしいと思います。iPS細胞治療は、壊れてしまった身体の一部を修復するのに有用だと考えられます。これは、原因治療と組み合わせることにより、効果が最大化します。
例えば、心筋梗塞により心臓の筋肉の一部が死んでしまった場合、従来では、そのまま心臓のポンプの働きが落ち、心不全と呼ばれる病態をきたしていました。ここにiPS細胞で作製した新たな心臓の筋肉を補うことで、この心不全の発症を抑えることが期待されます。
加えて、心筋梗塞の場合には、原因に対するアプローチとして、心臓の周りを流れ栄養する「冠動脈」が詰まってしまったところの修復治療ができます。
この根本的な原因治療とiPS細胞による修復を組み合わせることで、心臓を健康な時の状態に戻すことが期待されます。
原理としてはこのようなところですが、まずは臨床試験による安全性と有効性の確認が重要です。