【NBA】IT長者が2000億円を投じた、NBAの成長力

2019/12/4
八村塁やBリーグの注目度が高まるにつれ、バスケットボールが身近なものになりつつある。その最高峰リーグNBAは今、スポーツ界でも大きな成長を遂げている。特集『規格外のNBA』、第1回はそのすごさ概説する。
昨年は渡邊雄太、今年は八村塁と立て続けに日本人選手がNBAデビューを果たしたことで、世界最高峰のバスケットボールリーグと名高いNBAは一気に身近な存在となった。
これまで日本人にとっては遠い憧れの世界だったNBAの情報が、毎日のように民放のニュースや番組で取り上げられている。
なんとも不思議な感覚だ。
バスケットにおける世界のトップリーグ「NBA」。バスケットボールに特に興味がない人でも名前くらいは聞いたことがあるだろう。
そのNBAが今、アメリカ4大スポーツ(NFL、MLB、NHLそしてNBA)の中でも、大きな躍進を遂げている。
一体何がそんなに凄いのだろうか? 今回はそんな「NBA」について紹介したい。

NBAマネーが生まれる仕組み

NBAの魅力が「プレーレベル」にあることは間違いない。世界最高峰のプレーの質がベースになり、大きな付加価値を生んでいる。
その価値は世界的に見ても全てにおいてトップレベルにある。全て、というのは知名度や浸透度、ビジネス的な側面を含めた全て、である。
アメリカのビジネス誌『Forbes』は毎年、国内スポーツ球団の資産価値(資産と純有利子負債の合計)をランキング化している。
2019年2月の最新版では、NBA全30チームの平均資産価値が19億ドルであると発表された。日本円にするとおよそ2052億円(1ドル=108円)。
注目すべきはその伸び率だ。NBAの場合、前年から13%増えており5年前と比較しても約3倍。
アメリカで伝統的に人気のある4大リーグ、NFL(2%増)、MLB(7%増)、NHL(6%増)と比較しても、2倍近く資産価値が上昇しているのだ。
これは、チーム単位で見ても同じ傾向にある。4大リーグのみならず、欧州の世界的なサッカークラブを含めた、あらゆるスポーツチームと比較しても成長著しい。
例えば、NBAの資産価値の中でトップとなるチームが、ニューヨーク・ニックス。40億ドルだ。
トップ10にニックス(3位)、ロサンゼルス・レイカーズ(8位)、ゴールデンステイト・ウォリアーズ(9位)と3チームがNBAからランクインしている。
5年前は1チームもトップ10入りしておらず、最高がニックスの13位だったこと考えると、大きな飛躍だ。
その資産価値のなかで、特に伸びているのが試合映像の放映権料。
ローカルテレビ局との放映権料は年々上昇していく傾向にあり、大都市などのビッグマーケットではそれが大きな収入源となっている。
加えて、リーグが契約した2016-17シーズンから2024-25シーズンまで9年間の放映契約の総額は、なんと240億ドル(約2.6兆円)。世界中に数百、数千万人のファンを持つからこその、まさに桁違いの金額だ。
こうした放映権料に加え、ジャージー、グッズの売り上げなどのリーグ全体の収益は各チームに分配されるため、チームごとのビジネスの底上げにも大きく影響しているだろう。
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桁違いの利益を生み出す“NBA×投資”

これだけの成長を見せているNBAチームに、投資家が目をつけないはずがない。
例えば実業家でありIT系の投資家として成功したマーク・キューバン氏が2000年にダラス・マーベリックスを2億8000万ドルで買い取り、リーグの名物オーナーとなったことはNBAファンの間では有名だが、近年もどんどん新しいオーナーが参入してきており、NBAが注目市場であることを物語っている。
その象徴が、2014年のロサンゼル・クリッパーズの買収だ。元マイクロソフトのCEOであるスティーブ・バルマー氏が投じた金額が20億ドル。
それまでのリーグ記録が、同じ年の5億5000万ドルだったことを考えても、大きな衝撃だった。
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その後もレストランやカジノ経営で財を成したティルマン・ファーティッタ氏が22億ドルでヒューストン・ロケッツを買い、直近ではアリババの共同設立者であるジョー・ツァイ氏が合計35億ドルでブルックリン・ネッツと本拠地のバークレイズ・センターを買い取るなど、勢いは増すばかり。
他の競技を見ても、近年では2018年にカロライナ・パンサーズ(NFL)の買収額が28億ドル、2017年にマイアミ・マーリンズ(MLB)が12億ドル、2016年にシアトル・マリナーズ(MLB)が12億ドルであることを考えれば、NBAチームの価格の上昇は目を見張るものがある。
そして、その投資は成功の道を歩んでいる。
例えば、資産価値ランキング3位のウォリアーズ(ニックスとレイカーズのトップ2チームはファミリー経営)。その価値の高騰ぶりは凄まじく、ベンチャーキャピタリストのジョー・レイコブと、映画プロデューサーのピーター・グーバーは、2010年にウォリアーズを4500万ドルで共同購入している。
現在の資産価値が35億ドルであることを考えると、大成功の例として挙げられるだろう。
さらにウォリアーズは今シーズンからチェイス・センターという新しい本拠地でプレーしている。
このチェイス・センターはウォリアーズが所有するものであり、その建設費は14億ドルと言われている。
Getty / Ezra Shaw
チームが自らアリーナを持つ強みは、シーズン中のホームゲームだけでなく、イベントやコンサートを開催して大きな収入源を得られることだ。
リーグ屈指の人気球団であるウォリアーズは、怪我人の続出で大幅に戦力が弱体化してしまったものの、経営面では新たな強力な武器を手に入れたのだ。
実はこのアリーナ事情も、日本とは大幅に異なり、非常におもしろい。次回はNBAのアリーナ事情を詳しく掘り下げていく。
(執筆:大西玲央、編集:日野空斗、黒田俊、デザイン:松嶋こよみ)